比翼の鳥 (ページ18)

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「温いなんてものじゃないな」　°住処_gt.vo ページ18

貴方side

静寂に包まれたライブ会場は俗に言うアリーナというもので

お客様が入場しない間に忙しなく動くスタッフの一員である私はせっせとカメラの確認を進めている。

『‥ん？』

レンズを覗き、誰かがステージを通り過ぎた。

まだスクリーンには繋いでいないため大画面では確認できなかったが、ふと顔を上げるとおしゃれな私服の片岡さんの姿が。

片岡「どう？僕見えた？」

『ばっちり、ですよ』

片岡「あのねずっと聞きたいことがあったんだけど、Aちゃんのカメラってどんな感じなの？」

写真を撮るものではなく、スクリーンに切り抜きを映す大型の映像カメラはsumikaの担当になってから使い始めたもので、まだ新人だと伝えると

片岡「へぇ‥」

『片岡さんが使われているカメラはお写真用でしたよね？』

片岡「そうそう、って知ってくれてるの？」

『？はい、片岡さんのエッセイを購入したときに知りましたよ？』

片岡「エッセイも買ってくれてたんだ‥嬉しい」

いつの間にかステージから降りてきていた片岡さんは私の頭をまるで割れ物を扱うかのように優しく撫でた。

『っ、え』

片岡「ふふ、カメラ覗いてみても良いかな？いつもどんな風に俺たちを映してくれているのか気になってて」

『良いですよ、ここ見てみてください』

カメラの前に立っていた私の後ろから覆い被さるようにレンズを覗き込み、必然と片岡さんのお顔が真横にあった。

『(無理無理、え、顔綺麗すぎんか。ファンの人にコロされる)』

片岡「うおお、凄い‥」

少年のような声をこぼす片岡さんとは裏腹に緊張しまくる私。

そして、私が早すぎたせいか、他のスタッフ陣はまだ裏にいる。

この甘く煮詰めたチョコレートの中にいるような気分は、私をダメしているような気がする。というより、現在進行形でしている。

「あれっ、片岡さん？」

片岡「‥おがりん、どうしたの？」

『おはようございます、小川さん！あれ、その手元にあるのは‥』

小川「スタッフさんにAさんにコード渡してきてーって言われたから、届けにきました」

『忘れちゃってたか‥どうりでスクリーンと繋がらないと思ってたんですよね‥ありがとうございます』

小川さんの姿を捉えた瞬間、即座に離れた片岡さんは不服な表情をしていた。