マスターちゃん【FGO】【斎藤一】 (ページ4)

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召喚されてから数日が経った今でも、マスターは張り付けたように笑う時があった。

ある真夜中、ふと水が飲みたくなって食堂に向かうと見慣れた後ろ姿を見つけた。

「マースターちゃん」

『あれ？はじめちゃん？』

「感心しないなー。よい子は寝てないとだめじゃないの」

『今の今まで寝てたよー。目が覚めちゃったから水でも飲もうと思って』

はじめちゃんも飲む？と差し出された水を受け取る。触れ合った傷だらけのその手は冷え切っていて、さっきまで眠っていた人の手ではないことはすぐに分かった。

「それ飲んだらちゃんと寝るんだよー。眠れないなら、はじめちゃんが一緒にいてあげようか？」

『……いいの？』

「…ああ、構いませんよ。僕らは寝ても寝なくてもいい体なもんで。マスターちゃんが眠るまで傍にいてさしあげますよ」

『じゃあ、お願いしてもいいかな…？』

斬ることしかできない俺にできるのはこれくらいだから。
キャスターたちのように安眠の術をかけてやることも、波乱万丈な人生を送ってきた英霊たちのように昔話をしてやることも、温まるものを作ってやることも、なにもできないから、せめて。

「なに、怖い夢なんて僕が斬ってやるよ。だいじょーぶ、はじめちゃんてば無敵だから」

ベッドから顔を出すマスターの額にかかる髪をそっと整えて笑いかける。
生前、胡散臭いと言われ続けた笑顔だが、誤魔化しているのか否かマスターにはお見通しで、仮面を容赦なく剥がしてくる。そんなマスターだからこそ、俺は惹かれたんだ。

『ふふ、そっか』

せめて夢の中だけでも、マスターではなく一人の女として、Aとして。安らいでいてほしい。
そして俺はサーヴァントではなく一人の剣士として、男として、斎藤一として、護りきろう。

マスターが、いや。AがAでい続ける限り護り続けよう。俺の、自由の誠に誓って。