第1章 - 8話 ページ8
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随分と迂回して、家までもうすぐのところまで来た。
能力に気づかなかったために鍛えてこなかった肉体は、徐々に疲れを蓄積していく。汗が滲んできた。
だが、あともう少し。
私は速度を緩めずに道なき斜面を走り続ける。
すると突然、前方から爆発音がした。
嫌な予感がする。
さらにスピードをあげ、もうそろそろ家が見える、というところまで来た時、なにかが焦げた匂いと燃えて火が弾ける音がした。
自分の心臓の鼓動が聞こえる。
木陰に隠れて、家を見る。
森の中のひらけたところにある私の家は、炎を上げて燃えていた。
馬のような生き物に跨ったキャラバン隊が銃を持って家を囲んでいる。
信じられない光景に目を奪われていると
「誰だ貴様！」
子供の声が爆発音と同時に耳に入った。
私は慌てて彼の口を塞ぎ、キャラバンの方を見る。
爆発音でかき消されたからか、赤目の彼の声がかすれていたからかはわからないが、こちらに気づいてはいないようだ。
私は暴れる彼の口を塞いだまま、じっと目を見つめて話し出す。
「落ち着いて聞いて欲しい。私は君を助けようとして、気を失った君を抱えて家まで逃げてきた。でも、場所がバレてしまったみたいだ。」
敵意がないとわかったからか、彼は暴れるのをやめた。私はそのまま続けた。
「今燃えている私の家には大切な人がいるんだ。今どうなっているかわからない、助けたいのだけど…」
とそこまで言った時、
火の近くから聞こえてきた男の下品な笑い声に、思わずそちらを見る、と、
ラティだ
ラティの、首、だ
Aは男がラティの髪を乱雑に掴み、空へ掲げているのを見た。
男の足元にはラティの身体、正確には頭部だけがない身体が横たわっている。
Aは発狂しそうになった。自らの口を両手で塞ぐ。涙が溢れでてきて視界がぼやける。
ラティが…！
気が触れそうなギリギリ直前に、Aは今隣にいる小さな少年を思い出す。
だめだ、今哀しみに呑まれてはいけない。今、この子を守れるのは私だけだ。
私は炎から目をそらし、ぎゅっと目を瞑って涙を振り払い、彼に向き合った。
「逃げるよ」
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零落*・reira(プロフ) - カルタさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても励みになります…！ (2020年2月16日 15時) (
レス) id: 5e63a1d1e7 (このIDを非表示/違反報告)
カルタ(プロフ) - めっっっちゃ面白いです！合格おめでとうございます！更新楽しみにしています！ (2020年2月16日 14時) (レス) id: 132cc7b19e (このIDを非表示/違反報告)
白餡(プロフ) - パパっと読んでみましたが、描写も結構きっちりとしていて面白かったです。更新頑張ってください (2019年2月16日 23時) (レス) id: 81568ffd32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零落 | 作成日時：2019年2月14日 23時
