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第38Q 淡いピンク色の 赤司side ページ40

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赤司side




―――――

―――




 




 




「……あれ、赤司君。このような髪飾り持ってましたっけ?」




そう言うテツヤの掌には淡いピンク色のピン留め。




(……!)




僕はそれを見るなり一瞬でテツヤに近づき、


それをよこせと言わんばかりに手を差し出して受け取った。




「……テツヤには関係ないよ」




そのピン留めはかつてAからもらったもの。


長い前髪をうっとうしそうにしている僕にくれたんだ。




こちらに戻ったときにそのピン留めをポケットに入れていたため、


唯一残ったAとの思い出となっていて。


テツヤに背を向け、改めてそれを執務室の机の上に乗せると背後からくすくすと笑う声がして。




「Aさんからの頂き物なんですね」

「……うるさいよ、テツヤ。それよりお前はこれを取りに来たんだろう? 早く持って行け」




――あぁ、顔が熱い。




Aが好きだと自覚してからというものの、


あいつのことを思い浮かべるだけでいつもこうなる。


しかもそれを側近に見られてしまっていると思うと尚更頬に熱が集まってしまう。



恥ずかしさから机の上に(うずたか)く積まれた書類を叩き、


早く部屋から出て行くよう(すす)めると、テツヤは苦笑いを浮かべていて。




「そんなに愛していらっしゃるなら会いに行けばよろしいのに」




どこかたしなめるような調子の声に、僕は決まった返事しかしない。




「……会わす顔などないよ」




わかっているはずのテツヤはそれでも数日おきにこの手の話題を蒸し返して、


僕はそのたびにこう答えることしかできなくて。



……そうして、Aの元を去ってから数週間が経とうとしていた。




 




あれ以来、僕は血を啜ることはしていなかった。



身体の調子がそれほど悪くないということもあったけどなにより。


なにより、今他の血を啜ったらAの味が薄れてしまう。



花の蜜のように甘くて濃い、Aの血。


この味を忘れてしまうくらいならこのまま血を啜ることなく、朽ち果ててしまっても。




……それでもいいと。


それくらい、僕はAに恋い焦がれていた。




 




「――A…」




テツヤのいなくなった執務でひとり、僕はピン留めを手にとってそう囁いて。



(いつく)しむように柔らかく。


そっと、唇を落とした。




 




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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍沢鳴 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年4月9日 0時

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