検索窓
今日:1 hit、昨日:21 hit、合計:253,574 hit

第2Q 小さな人間 ページ4

.




……うん、疲れてんだよね?


そうだそうだ。


最近レポート提出のラッシュが終わったばかりで寝不足気味だし、


これは幻なんだきっと。



そう思ってバッグをかごに入れ急いでペダルに足をかけ逃げようとした。


しかし次の瞬間、私の背中に何かが衝突する。




「待て、僕ひとりをこんな場所に置き去りにする気か? 僕も連れていけ」

「ぎゃあ!……わ、わかった、わかったから背中は……っ、」



小人は私の背中に飛びかかったらしくよじ登ってくる。



背中が弱い私にしてみたらこの動きは反則だ!




(……どうせ幻、明日には消えてるだろうな)




そう思い直すことにした私はその小人を再び自転車のかごに入れ、


アパートまでの道のりを進むことにしたのだった。




 




 




 




「――人間の住処(すみか)はこんなに狭苦しいのか……」

「学生の一人暮らしには十分なんです!」




自転車をこいで5分ほどで到着した私の部屋をあきらかにガッカリした様子で見渡す小人に、


私は夜遅い時間にもかかわらず声を荒げてしまった。



よくある1Kの学生用アパートの玄関先にたたずむ小人を無視して、


私は手を洗うため洗面台に向かおうとした、けど。




「お腹が空いた。……人間風情(にんげんふぜい)の食べ物が口に合うとは思わないがないよりマシだ。用意してくれないか?」




私を見上げ、相変わらず偉そうにそう言う小人に私は無言で洗面台に向かうことにした。




(……さっきからものすごい上から目線で話すよね…この小人!)




その態度にイラつきながらも遅い夕飯を準備するため私は台所に向かう。


あの小人はというとテーブルの上に座り部屋の中を見渡していた。



……しかし何者なんだろう。


人間……じゃなさそう、というかあれが人間だとしたら新種になるんじゃないかな。


小さいし。



家に入れたことすら後悔し始めながらも、


小人の分まで多めに溶き卵と刻みネギを浮かべたうどんを仕上げ、テーブルまで運ぶ。


ちなみに小人の分は(めん)を短めに切ってやり普段私が使うお(わん)に入れた。




「ねぇ。食べる前に名前くらい教えなさいよ、小人さん」




興味津々といった様子の小人にそう言うと、小人は仕方がないといった風のため息をつく。


そうして(つむ)がれる言葉に、


私は思わず(はし)を落としてしまいそうになるのだった。









.

第3Q 影→←第1Q 紅い月夜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (266 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
305人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:藍沢鳴 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年4月9日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。