第25Q 苦しくて ページ27
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「……どうしよう、かなぁ」
赤司ご所望のタブレット菓子を買えるだけ買った私は、
コンビニそばの公園でベンチに座りながらぼんやりと空を眺めていた。
帰りたくない、だなんて思ったらついここに足が向いてしまったのだ。
空を見上げても流れる雲ばかり。
この公園は家を飛び出した赤司を見つけた公園で、でも今は私ひとりだった。
(……赤司)
家には帰りたくなくても、考えるのは赤司のことばかり。
だからといって立ち上がる勇気もなく、空を見飽きた私が足下を見つめだしたときだった。
「どうしたんスか? こんなところで」
「……涼太」
顔を上げれば、コンビニの袋をぶら下げた涼太の姿。
私が何も言わないでいると涼太は首を傾げながらもこちらに寄ってきて、
私の座っているベンチに腰を下ろした。
「こんないい天気なのにしけた顔してるっスね」
「……うるさい。てか涼太の家ってこの辺だったの?」
「そうっスよ。言ってなかったっけ?」
聞いてないよ、と私は心の中で言いつつ再び視線を足下に戻す。
そうすれば、ぴちちと鳴く鳥の声以外何も聞こえなくなって。
この無言が今はちょうどよかった、のに。
「……あの男のことっスか?」
涼太は不意にそうつぶやくのを耳にして、私の心臓はぎくりと揺れる。
顔を上げれば、いつも以上に真剣なまなざしとぶつかった。
「この間かな。オレ、Aっちとあの男が歩いてるの見たんス。……好きなんスよね? あの男のこと」
――好き、だなんて。
「違うよ、そんなんじゃない」
――赤司は私自身を求めてはいない。
“私”という形さえあれば、どうにでもできるんだから。
「嘘つき。泣いてるっスよ」
「――泣いて、なんか……っ」
泣いてなんかない。
わかりきってたこと、泣く理由なんかない。
ただ、胸が苦しくて。
赤司が遠くなった気がして苦しいだけなの――…。
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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
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