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第22Q 渇き 赤司side ページ24

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赤司side




―――――

―――




 




 




身体の自由を奪って子を(はら)むまで抱き続ければいい。


そうして孕んだならばあとは死ぬまで人形のようにただ僕の(かたわ)らに(はべ)らせる、


つもりだった。



……それでいいと、信じて疑わなかった。



当然のことだろう。


運命が定めた僕の許婚はヴァンパイアでもない、ただの人間で。



そんなものを()でるなど、あり得ないとさえ思っていたんだから。




 




 




 




…………だが、いつからだろう。



名前を呼ばれるたびに。


柔らかい視線を向けられるたびに。



(かた)く閉ざされていた心が、とろけるように崩れていくのを感じたのは。



僕をただのひとりの“僕”として(あつか)うことに慣れていなくて。


だが、慣れてしまえばこれ以上心地の良いことはなくて。



だから……。


僕だけを見ていてほしいと、気づけばそう思うようになっていた。




そのまなざしも。


声も、指先も。


その身体の、髪の先までも僕のものにできるなら。




――僕はもう、ヴァンパイアになど戻らなくていいから。




呪いなど解けなくてもいいから、Aのそばにいたい。




 




 




 




とっさに掴んだAの指先からは、花のような甘い香りがした。


胸いっぱいにその香りを吸い込めば、身体の芯から満たされていくようで。




(……A)




心の中で(とな)えた名前は、万能の呪文のようだった。




――この感情は、鍵だった。




この楽園が崩れ落ちる鍵。


最果ては、もうここまで来ていた。




 




 




 




 




 




「――――っ!」




僕は、のどの(かわ)きに目が覚めた。


辺りを見渡せばすっかり暗闇が広がっていて、深夜を迎えているらしいことに気がついて。


そこでふと、いつも以上に夜目が()いていることに気がつく。


静かに起き上がると、ベッドから少し離れたところに陣取って眠るAを見つけた。



……しかし、暗闇に浮かび上がる白い首筋を目にとどめた瞬間、


身体の奥から抑えきれなくなりそうな衝動がせり上がって。




 




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第23Q 楽園の終わり→←第21Q 気づいては駄目



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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍沢鳴 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年4月9日 0時

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