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第21Q 気づいては駄目 ページ23

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「……ない、な。血さえ、……飲め、ば――…」




そう言って、すうっとまぶたを閉じていく赤司。


私はその姿を、黙って見つめることしかできなかった。




 




聞くんじゃなかった。


そうすれば、あんな言葉聞かなくてすんだのに。



『血さえ、飲めば』だなんて。



……赤司が本当は吸血鬼なんだって、改めて私との間に線引きされたみたいじゃない。




――なんでこんなに悲しいのよ。




なんでこんなに、……苦しいのよ?




赤司の顔にかかる髪を払いながら、私は苦しい胸の内を持て余していた。


日焼けなんかしたことないんだろうと思えるほどの真っ白な素肌を私の指が(かす)めた瞬間、


赤司の指が私の指を捕らえた。



大切そうに握りしめて、心底安心していると言ったような顔で微笑んで。


そのまま、自分の唇の上に乗せた。




指の腹に伝わる熱。



赤司の唇からは想像できない柔らかさ。


荒い吐息。


 

小刻みに揺れる唇は私の心も揺さぶって。


(つむ)がれる声は小さかったけど、それを私は確かに聞いた。




「……そばに、いてくれ」

「……うん」

「……ここは……、居心地がいい……」




とろんとした瞳が私を(とら)える。



赤い頬も、熱い吐息も。


勘違いしてしまいそうになるじゃない。




「――そばにいるから。おやすみ、赤司」




その言葉を聞いて安心したように眠る赤司の顔を見て、私は泣きそうになった。



……いけない。


気づいちゃいけない、見ないふりをしなくちゃ駄目だ。



私は被食者で。


赤司は捕食者。


決して同じラインに立てるはずがないんだから。



赤司だって、言ってたじゃない。



私たち人間は吸血鬼の(エサ)


赤司が私の元にやってきたのも、自分が王になるために必要なモノだから。



……愛なんて幻想だと、はっきり言ってたじゃない。




 




 




 




 




 




――雨の音と、ずいぶん安らかになった赤司の呼吸音。




それ以外はなんの音もない静かな日曜の午後。




赤司に掴まれた指先だけが、温かくて――……。




でも、苦しかった。




 




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第22Q 渇き 赤司side→←第20Q 雨からの風邪



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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍沢鳴 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年4月9日 0時

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