第19Q 嫌な夢 ページ21
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今日は日曜日。
バイトもなく、本当の意味での休日で。
赤司が家に住み着くようになってから一月が経とうとしていた。
――大学に連れて行って以来、赤司はたまに外出するようになった。
今日も赤司は外出していて、
行き先は言わなかったけどたぶん駅前の大きな本屋にでもいるんだろう。
ちらりと窓の外を見れば、今にも雨が降りそうな曇天。
(雨が降る前に帰ってくればいいけど……)
そう思いながら、気づけばうとうとしてしまっていた私の意識は半分真っ白で。
ものの数分で完全に夢の世界に旅立ってしまったのだ。
――どこを見渡しても真っ白な空間。
その中にいるのは私と赤司だけで。
どういうわけか指一つ動かせない私は赤司にされるがままで。
『……僕の
妖しく笑った赤司の顔が私の首筋に近づいていく。
口を開くと、そこからのぞくのは鋭い牙――…。
……やだ。
…………こわい!
「――――っ、あ……!」
壊れそうなくらいの激しい鼓動と不規則な呼吸のリズム。
まぶたを開ければ、そこには見慣れた部屋の景色が広がっていたから。
(よか、った……)
「夢、だ」
そうつぶやいていつの間にか寝転がっていたベッドから起きあがれば、
ようやく夢と現実の区別が鮮明になってきた。
……なんて夢を見たんだろう。
そう思ってため息をついて、私はまだ震えるように上下する自分の胸元を見つめる。
――この一ヶ月で、赤司はこの世界によくなじんできた。
だから、
赤司は吸血鬼なんかじゃなくてただの人間なんじゃないかって思い始めている自分がいて。
……そうすれば、こんな夢を見ることもなく赤司と一緒にいられるでしょう?
「って、何考えてんの……」
ふと芽生えた考えを打ち消すよう私は頭を振って視線を窓の外に向けて、
そこでようやく雨が降り始めていることに気づいた。
その天気の変化に気づいた次の瞬間には私の脳裏に赤司の姿が浮かぶ。
……アイツ、傘なんて持ってないんじゃない!?
いつから振っている雨なのかわからなかったけど、
もし駅前から帰ってくる途中で雨が降ってきたんだとしたら。
そう思ったらいてもたってもいられなくなった私が立ち上がった、そのとき。
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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
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