第10Q ブレ ページ12
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――傷つけたんだろうな。
私の言葉で、赤司は傷ついてしまったのかもしれないと思った。
自分だって十分すぎるほどの暴言を受けたはずなのに、不思議とそこに怒りや悲しみはなくて。
傷つけたんなら謝らなきゃ。
そう思った私は玄関を飛び出して道路に出る。
あてもない中で、まずはと向かって右へ走り出したのだった。
「……うーん」
どこ行ったんだ。
今私が探しているのは、このあたりでも比較的にぎやかで、
バイト先のファミレスも並んでいる通り。
でも赤司らしき姿はない。
走りっぱなしだった私は乱れた息を整えつつ、
辺りを見回しながらも彼のいそうな場所を考えるのだった。
……よくよく考えたら、現金を渡してないんだからこんなところにはいるわけない。
え?
じゃあ左に行けばよかったのかも。
あっちはそこそこ大きな公園くらいしかないけど……。
「……公園!」
――そういえば日中赤司が言ってた。
『人間の多く集まる場所は嫌いだ』って。
そうと決まれば話は早い。
私はガクガクする足にもう少しだけ、と気合を入れ直して走り出す。
(なんでここまで)
必死になっちゃってるのか、はっきりとした理由はわからないけど。
私は公園まで必死に走って、走って。
そうして、公園の真ん中で立ちすくんでいる人影を見つけたのだった。
「――赤司!」
確信めいた気持ちからこちらに背を向けているその人影に向かってそう叫ぶと、
その赤い髪を揺らしながらこちらに振り返った。
「……キミか」
それだけつぶやいて、赤司は私から視線をそらす。
私はたまらず彼のそばに駆け寄ろうとしたが、
再び開かれた彼の口から出る言葉に足が止まってしまった。
「何故追ってきた」
怒っているような、
漆黒に溶け込んでしまいそうな空気を纏った赤司の言葉に、
私はさっきまでとは違う“ブレ”のようなものを感じて。
「だって赤司、急に出てったじゃない」
そう答えると、赤司はゆっくりと私に視線を向けた。
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ゆあ - すごくキュンキュンしました! ヤバイですね! これからも頑張ってください! (2017年3月16日 22時) (レス) id: 8e5932bb74 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 吸血鬼の赤司がかっこいいです。 応援しています! 頑張って下さい^ ^ (2017年2月14日 6時) (レス) id: bf74db187f (このIDを非表示/違反報告)
かずみ - いえいえ!はい!続編おめでとうございます。 (2015年6月7日 14時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - フユトさん» ありがとうございます! これからも更新も含めて頑張らせていただきます!! (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
藍沢鳴(プロフ) - さくさん» ありがとうございます! そんな風に言ってもらえて嬉しいです。(^^) これからも頑張ります!(*`・ω・´*) (2015年5月8日 14時) (レス) id: 5e3089a4fd (このIDを非表示/違反報告)
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