１０３ 重なる ページ13
忠告を受けた後、野坂はひとりで病院の中庭に出た。
大きな噴水と緑豊かな景観を特徴とする中庭。
手術前には何度も訪れていて、野坂のお気に入りの場所でもある。
噴水の周りをしばらく歩いてから近くのベンチに腰掛け、ふ、と息をついた。
医師の″諦めるべきです″という言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
……僕なんかいなくても、あのチームは大丈夫だ。
そう。
前の様に走れない。
ボールを追いかける事も出来ない。
得意な宙返りでさえ失敗するのが怖い。
…こんな、僕なんか。
それに、Aがもし
もう一度ため息をついた時、向こう側から自分の足元へとボールが転がって来た。
「ん、」
…サッカーボール。
こんな状態でも、やはり野坂もサッカー少年である。
手で拾い上げる代わりに、軽くリフティングをしてから手に取った。
そのリフティングの動きは、全く衰えていない。
「君もサッカーやるのか」
ボールの主は、幼い男の子。
まるで太陽の様なオレンジの髪の毛に、緑の瞳。
野坂は、男の子に歩み寄った。
「そういう君も、サッカー好きなのかい」
激しい運動をしてはいけない病気を抱えているという男の子は、それでも尚サッカーは自分のいちばん大切な物だと言う。
男の子は、恐らく歳でいえば幼稚園かその辺り。
野坂の半分にも満たない、そんな歳で夢が絶たれてしまう。
しかし、男の子は前向きであった。
「だからさ、僕は応援することにした。
今さ、日本のサッカー選手が世界と戦ってるんだ。凄いんだ！外国のでっかくて強いやつらと渡り合っているんだよ！」
「そうか…。」
野坂の中で、日本にいる仲間達の声が響く。
全てを懸けて臨んだあの大会、彼らとぶつかり合い、信じがたい真実を知った。
けれどそれ以上に、大きなものを得る事が出来た。
「辛くて苦しい時も、日本の試合を見ていると元気が湧いてくるんだ。だから、僕は決めた。
サッカーは出来なくても、精一杯応援するって。それで、自分の代わりに夢を叶えて貰うんだって。」
「サッカーが出来なくても、サッカーを近くに感じていられるんだね。」
「うん！でもね、諦めたわけじゃない。勇気を貰って、病気を治すんだよ。
いつか病気を治してサッカーをやるんだ！」
その姿に、野坂は目を見開く。
明るいその雰囲気が、Aと重なった。
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通りすがりのジンギスカン(プロフ) - ありがとうございます!更新楽しみにしています! (2023年1月3日 0時) (
レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 通りすがりのジンギスカンさん» はじめまして！コメントありがとうございます。楽しく読んで下さっていると聞き、とても嬉しいです。パスワード送らせていただきますね！これからもよろしくお願い致します。 (2023年1月2日 22時) (レス) id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりのジンギスカン(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読んでます!続きが気になるので、良ければパスワードを教えて頂けませんか? (2023年1月2日 0時) (レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
加茂&夏油の嫁(プロフ) - 花鈴萌さん» こちらこそです！更新楽しみにしています！ (2022年12月31日 5時) (レス) id: ef07d69be6 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 加茂&夏油の嫁さん» はじめまして、ご指摘ありがとうございます。すみません単なるミスです。なぜ今まで気づかなかったのか……！ただ今修正しました。面白いと言って頂けて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2022年12月31日 5時) (レス) @page20 id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2020年9月19日 10時
