092. Shiraishi ページ23
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「──灰谷先生、今日はもう帰った方がいいよ」
「ああ…はい…」
初療室で、備品の確認をしている灰谷先生に声をかけた。灰谷先生は今日は当直じゃないから。
「…──白石先生、」
「ん?」
「…すいませんでした…シアン騒ぎの時」
「えっ?」
何を言われるかと思えば、
灰谷先生に、いきなり謝られた。
「…僕あの時…患者さんのことも倒れた冴島さんのことも考えられませんでした…ただ、怖いって…怖くて……僕は臆病者なんです。…僕は医者には向いていません…」
…臆病だから、医者に向いてないと決めつけるのは──それは、間違ってる。
「…──ダメージコントロールのポイントって、なんだか分かる?」
「えっ…あ、アシドーシス…低体温…凝固障害…」
「うん、それも大事ね。……でもね、ダメージコントロールの1番のポイントは──臆病であること」
臆病であることが、命を救う時だってある。
だから、臆病だから医者には向いてないなんて、思っちゃだめ。
「秋元さんの場合、出血を止めようと無理にオペを続行していたら、最悪の事態になっていたかもしれない。あの時…このままやるのは危ないって手術を一旦中断したから、今、秋本さんは生きてる…その判断が出来たのは──」
私は少し遠くでパソコンに向かってる藍沢先生と
書類に所見を書いているAの方を見ながら言った。
「Aにも藍沢先生にも──臆病な一面があったからよ」
「…」
「…灰谷先生が医者に向いてるかどうかは分からない。私だって…毎日、自分は向いてないって思うし。…だけど、臆病であることも、医者の素質として必要だと私は思う」
その時私の話を聞いてたのか、藍沢先生が口を開いた。
「──シアンの臭いは、感じる人間と感じない人間がいる」
「えっ…」
「感じるのは40%で、お前はたまたまその40%のうちの1人だった。…それが患者と──冴島の命を救う行為に貢献した」
たまたまだったのかもしれない。だけど──
シアン騒ぎで患者と冴島さんを救ったのは──灰谷先生だ。
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萌娜(プロフ) - 杏さん» ありがとうございます(*^^*)とても嬉しいお言葉であります(><) (2017年10月29日 18時) (レス) id: 3c9022af09 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - 最近こちらに巡りあいまして楽しく読ませて頂いてます!更新楽しみにしてますね! (2017年10月28日 11時) (レス) id: ce7544d8fb (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - あやさん» ありがとうございます(><)感激です(><)これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年10月28日 10時) (レス) id: 3c9022af09 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 面白いです!頑張って下さい! (2017年10月27日 17時) (レス) id: bf70448eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2017年10月23日 15時