【呪術廻戦】雲外蒼天 (ページ4)

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交通インフラの整っていない田舎。

1時間に1本しかないバスにタイミングよく乗れたのが不幸中の幸いだった。

目的のバス停についた私は、山道を駆け上がる。

が、西へと傾いていく太陽に私の焦りは大きくなるばかり。

「こういうときに傑みたいに移動用の呪霊がいたら便利なのに！……？」

視界に入る、ふらふらと降りてくる黒い制服。

あれは、

「＿＿七海くん？七海くん！」

「は、結城さん、何故…！？」

全身から血が出てはいるが、命に関わるほどの大怪我はしていなさそうだ。

「灰原が上にまだ！」

「補助監督さんにすぐこっちへ向かうように頼んであるから、七海くんはそのまま下山して合流。灰原くんのことは大丈夫だよ。…私を信じて。」

「でも…っ、分かりました。」

七海くんが坂道を下りはじめたのを確認して、私は再び走る。

徐々に明確になる2つの気配。

一方の呪力が先に底をついた。…灰原くんだ。

階段が途切れ、開けた場所に出る。

「！！」

白い装束の呪霊が私を認識して動きを止める。

そのすぐそばには灰原くんが。気を失っているが…まだ息はある。

山道の入り口に鳥居もあったし、土地神か。

あの装束もおそらく神御衣(かんみそ)だろう。

「可愛い後輩を傷つけるのやめてくれるかな。」

「ﾋﾄﾘﾆ、ｼﾅｲﾃﾞ…ﾜｽﾚﾅｲﾃﾞ…！」

近くの村で聞いた話では、昔は毎年この山で産土神を讃える祭りがあったが村民の減少と高齢化もあり数十年は行われていないらしい。

神は畏怖の存在でもあるから、神社は負のエネルギーが溜まりやすいんだよね。

「会話は出来なさそうだけど、私に気づいて標的を変えるだけの知能はある。術式も持っているようだし。1級ぐらい？」

「ﾕﾙｻﾅｲ…」

そんな怖い顔しないほしい。

これほどの呪霊が生まれるんだからかなり信仰が厚かったんだろう。

2級と言えど優秀な後輩たちでも歯が立たなかったんだし、ちょっと厄介。

まぁでも…

「私の敵じゃないかな。」

「ｱ"ｱ"ｱ"！？」

愛染明王の力を借り顕現した五鈷杵を振るう。

呪霊はそれを避ける暇もなく地面に叩きつけられ、弾けて消えていった。

「相手が悪かったね。」

…特級をなめるな。