愛と哀２【約束のネバーランド】

アイが９５つ ページ49

ノーマン「エマ、レイは？」

エマ「医務室...見送りなんてしたくないって」


ノーマンと兄妹達が別れを告げているのを

階段の上から黙って見守る


私があの兄妹の輪の中に入ることはない

あの笑顔を向けられることもない


本当に、全てが無駄だった

いや、そうでもないか

私の裏切りが、せめてみんなの生きる原動力になれば良いのだけれど

こんな考えおこがましいかしらね


ノーマン「僕の気持ちを汲んで？」

エマ「いや！その気持ちだけは汲めない

本当は嫌なら尚更だ！！」

ノーマン「本当に君は、すぐ無茶をする

けれど真っ直ぐで、だから、だから僕は...


ママ「時間よ、ノーマン」



ノーマンがエマに見せたあの表情、大切な人を、見る目だった

やっぱり、あなたは...お別れだ


ノーマン「大丈夫、絶対諦めないで」

エマ「っうん」


パタン、とドアがしまった


『さようなら、ノーマン』




最悪の朝が来た

相変わらず早い時間に起きる

ノーマンは、もういない


部屋を見渡しても、廊下に出ても、洗面所を見ても、彼の姿はなくて

世界がモノクロ映画みたいに、色を失った



自由時間

私はいつも通り森が広く見渡せる木の下にいる

いつもならエマが元気に鬼ごっこを誘うのに


火が消えたように、静かだった

時間がコマ送りのように進んでいく


ノーマンがいなくても、世界は何も変わらない

何十億人も人がいる世界で

たった40名弱の人だけが違うと感じる


私は、今まで何のために多くの犠牲を払ったのだろうか

大切な家族も、信頼しあった兄妹も、最愛の人もいなくなって、

ただただ私達が、私だけが生き残る


「エリー」

隣から名前を呼ぶ声が聞こえた

この時間にこの木の場所で私の名前を呼ぶのは

決まっていつも同じ人

『...レイ』


二人並んで座って、話さずに本を読む

これがいつもの光景だ


レイ「...俺の６年間、何だったんだろうな」

話ながら本を開くレイの言葉に耳を傾ける


レイ「あいつらを守るために

ずっと昔からひたすら嘘をついて、兄妹を騙して、見捨てて」


重い声で話すレイの目は虚ろで、世界に絶望したような顔だった


レイ「なのに、絶対に守ると誓った大切な親友一人すら

守れなかった」


レイも、幼い頃にこのハウスの酷い現実を知った


イザベラ(ママ)はレイの本当の母だ


レイはそれを知って尚、

私達３人を守るために、自らを売り込んで

今までずっとスパイとして、脱走に必要なものを集めていた

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