アルコール度数と共に重ねた嘘。【黄】 ページ34
____私は、彼に嘘をついている。
それはどんな嘘かというと____、
「んんー、僕酔っちゃった」
アルコール度数3%のお酒で顔を赤くするるぅとくんに、思わず笑いそうになる。
でも、笑っちゃダメだ。私は、お酒に弱い "設定" なのだから。
「私も、酔っちゃったかも」
「ほんと?僕たちおそろいだね」
ごめんね、と心の中で詫びる。まったく酔っていないのに酔っているフリをするのは、心が痛い。
彼は『お酒に強い人よりは同じくらいの人がいい』と言っていたから、ずっと嘘をついている。
出会ってから、ずっとだ。
もっとも、嘘をついている理由はそれだけではない。
酔いやすい体質ならば、お酒の勢いに任せて言えたのだろうに。
「……ね、ちゅーしていい?」
「僕お酒臭いよ、ん」
了承を唇に乗せて、直接伝えた。
これがしたかったのだ。中々自分からというのは難しいものがある。だから、彼が酔っていたら雰囲気でできそうな気がして。
「お酒の味する」
「だから言ったじゃん。Aかわいい」
破顔して私の頭を撫でるるぅとくんの方が可愛いと思うが、それは心の内にしまっておく。
「るぅとくん、好き」
「僕も」
「るぅとくん、大好き」
「僕も大好きだけど……」
酔っているという設定である私の想いを受け取り、なぜか返事に含みを持たせたるぅとくん。何事かと思ったら____、
「A、気付いてないの?」
そのまま、ソファに押し倒される。いつもみたいな甘い雰囲気ではなく、少しの緊迫感も混じったような空気。
彼の言うことに、心当たりはなかった。
「……何のこと?」
「僕も酔ってるから手加減はできないけれど。____あ、僕 "は" か」
違和感を覚える。まるで、私が酔っていないみたいな口ぶりだったから。
「酔えない人って、酔う人の気持ちというか、感覚がわからないんだろうねぇ。だからA、バレてるよ。酔って理性がないと思っちゃった?」
彼が浮かべた微笑みが、ほんのちょっと怖い。
バレていたのか。彼も酔っているから、多少は騙せると思ったが。
「う、嘘ついて、ごめんなさい。るぅとくんに、嫌われたくなかった」
「ん、いいよ。自分で言えてえらいね。____ってことは、Aは酔ってないんだ」
嘘をついていたことは悪いと思っている。罪悪感だってあった。だから本心を告げたら、彼は寛大な心で許してくれた。
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虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - 蝉-セミ-さん» 蝉さんありがとうございます!!私の書く💛さんの良さを分かっていただけて嬉しい限りです😭これからも喜んでいただけるよう更新頑張ります!笑 (2022年10月15日 12時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
蝉-セミ-(プロフ) - 久しぶりに占ツクにきたら短編集更新されてて嬉しかったです。やはりアイさんの書くちょっと大人っぽくて意地悪な💛くんが好きですw🤣 (2022年10月15日 1時) (レス) @page35 id: 19d8717651 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - わっふるのとっぴんぐさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません!そう言っていただけて本当に嬉しいです、モチベーションになります…😭 ありがとうございます! (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - みぃなさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません!私は後遺症もなく元気です☺️ ご心配ありがとうございます( ; ; ) (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
わっふるのとっぴんぐ(プロフ) - コロナ大丈夫でしたか!?!?もうこの短編集最高すぎて…!!主さんのペースで更新がんばってください!(*´`) (2022年8月10日 17時) (レス) id: b8d201f8af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ x他1人 | 作成日時:2022年3月29日 22時