・ ページ28
____ああ、ずるいよ。
誰よりも笑顔が似合う君が笑うと、僕の鼓動も高鳴る。
……そして、見た瞬間から君になにより聞きたかったこと。
｢A、なにかあった……？｣
なにかあった？とはアバウトな質問だが 雰囲気が変わったのを彼女自身も分かっていたのか、彼女は｢あー｣と漏らした。
そのくらい、Aは可憐で清楚になっていた。
｢実は、ね｣
固唾を飲んで、彼女の桜色の唇が紡ぐ次の言葉を待つ。
｢____好きな人の、ためなの｣
顔を少し赤らめてそう告げる君。
全身の血の気が引いていくのを感じながら、後悔と落胆と悲しさと、全部の感情がごちゃ混ぜになる。
____まだ、好きだったんだ。
離れていても僕が君を想い続けた6年間、君は他の、僕以外の誰かを想っていたのか。
胸がはち切れそうだった。
｢でね、私、伝えなくちゃいけないことがあって｣
____待ってくれ。
その続きは聞きたくない。
そう思うのとは裏腹に、口は｢そうなんだ｣と勝手な相槌を打つ。
｢あの、実はね｣
お付き合いした？結婚する？赤ちゃんがいる？
嫌だ、嫌だ____！
……気がつけば、僕は君を抱きしめていた。
｢ちょ、え……？｣
君は思いもよらない、僕の行動に声をひっくり返した。
他の誰にも君を渡したくなくて、なんて言ったら君はどんな反応をするかな。
6年も経ってしまったし、今更とか思われるかな。
君が想っている相手に迷惑かな。
____でも、もう引き返せないところまで来ていた。
この行動も、僕の気持ちも。
今こそ、勇気を出すときなんじゃないのか。
あの日言えなかったことを言う、最後のチャンスかもしれない。
｢A、僕からも言いたいことがあるんだ｣
｢そっか。じゃあお先にどうぞ｣
ゆっくりと僕から離れていくA。
……6年間も、離れ離れで。
それでも君を想い続けた。
君が僕の気持ちに応えてくれなくても、僕は君が好きだろう。
ただ、いちばんに願っているのは君の幸せだ。
君が僕以外と幸せになる道を選ぶのなら、いつか僕は笑って送り出したいと、本気で思う。
でも、今だけは許してほしい。
Aに対する甘えかもしれない。だけれど。
｢僕は、Aのこと____｣
目の前の君は見れない。見る勇気がない。
どんな表情をしているのか、知ってしまったら言葉に詰まってしまいそうで。
｢ずっとずっと、好きです。これからも一緒にいたいって、逢いたいって 6年間ずっと想ってた｣
……言えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 229人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - 蝉-ｾﾐ-さん» 蝉さんありがとうございます！！私の書く💛さんの良さを分かっていただけて嬉しい限りです😭これからも喜んでいただけるよう更新頑張ります！笑 (2022年10月15日 12時) (
レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
蝉-ｾﾐ-(プロフ) - 久しぶりに占ツクにきたら短編集更新されてて嬉しかったです。やはりアイさんの書くちょっと大人っぽくて意地悪な💛くんが好きですw🤣 (2022年10月15日 1時) (レス) @page35 id: 19d8717651 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - わっふるのとっぴんぐさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません！そう言っていただけて本当に嬉しいです、モチベーションになります…😭 ありがとうございます！ (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根元付近に生息しているアイ(プロフ) - みぃなさん» 返信遅くなり大変申し訳ありません！私は後遺症もなく元気です☺️ ご心配ありがとうございます（ ; ; ） (2022年10月12日 20時) (レス) id: 98cb88ece4 (このIDを非表示/違反報告)
わっふるのとっぴんぐ(プロフ) - コロナ大丈夫でしたか！？！？もうこの短編集最高すぎて…！！主さんのペースで更新がんばってください！(*´`) (2022年8月10日 17時) (レス) id: b8d201f8af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹の根元付近に生息しているアイ x他1人 | 作成日時：2022年3月29日 22時
