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「はぁっ……はぁ」


汗か涙か分からない ぬるい液体が頬を伝い、廊下にぱたりと落ちる。



違う。別に王子様なんて好きでもない。

それはもちろん、人間的にも、恋愛的にもだ。


だって彼はいたずらっ子だしやめてと言っても聞いてくれないし 挙句の果てには私のこと襲いかけたし……


なんて考えても、虚しさが募るだけだ。


あんなことをされたし、もう嫌いになりそうだ。

好きなんかじゃない。

好きじゃない、のに。


「なんなの……らしくない」


頭の中はずっと彼ばっかりだ。


心のどこかで、彼が白馬の王子様なんじゃないかと期待している気がして。



誰とも結婚はしたくないし誰も選びたくない。


けれど、誰も選ばないとどうなる。

私が強力な打開策を提示しない限りはなにも変わらないか、お見合いになるかだ。


別に嫌じゃない。

むしろ、王子様がお見合いでもして国王になってくれれば国民の暮らしも安定するし、その奥さんもお城の家事を手伝ってくれるかもしれない。


そうだ、いいことずくめじゃないか。


でも、なんで、どうして気が乗らないの。



____なにかを得るにはそれ相応の なにかを置いていかなければならない、なんて言っていたのはどこの誰だったっけ。



私が得るのは、自分の幸せか他人の幸せか。

両方ほしい、なんて欲張りな選択肢もなくはないが、時間がなさすぎるし、なにより私がそんな名案を提示できる自信もない。


私が置いていくのは、王子様か側近たちか。もしくは全員か。



「____私には、なにも置いていけないよ」



「____ね?だったら逃げればいいんだよ」



突然背後から声がし、驚いて振り返ると そこにはさとみ様が。



「一日ぶりだね」


「____えっと、はい、そうでした、ね」


考えごとをしていたせいで、どう返したらいいか分からない。


上の空な返事しかできず、それにはさとみ様も少しばかり驚いていた。



が、さすがと言えばいいのか 彼はその驚きを一瞬で消し、表情と空気を変えてみせる。



「……俺さ、Aのこと好きだよ」

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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T)  以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時

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