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「や、やっぱり帰ろうかな……」
____ドアの前で葛藤してから10分が過ぎようとしていた。
何回かノックをしようと試みたが、臆病な私はなかなかノックできずにいる。
「いやっ、でも……!」
覚悟を決め、ノックを四回。
____返事は帰ってこない。
部屋にいないのか、と思ったがドアから微かに室内の光が漏れている。
王子様に限って電気をつけっぱなしで外出するなんてありえないだろう。
唯一残る部屋にいない可能性といえば、お城内のどこかにいるということだ。
とりあえずドアを開けてみて、いなかったらいなかったで部屋に戻ればいい。
そうだ、そうしよう。
なにかを忘れている気がするが、それも思い出すことはなく
いよいよ二回目の覚悟を決め、ドアを押し開ける。
心臓が口からまろびでそうになるのを抑えながら、ゆっくりと中を覗くと、
「____なにか用ですか」
いかにも不機嫌そうな顔つきをしていること以外、王子としては百点満点だろう。
そして、メイドが中に入るのはご法度なため 普段は「入っていいよ」という意思表示をしてくれるが 今日はそれがない。
「ぁ、えっと、その」
「なんですか?」
言葉に迷う私を、まるで「逃がさない」と言っているかのように圧を含んだ声で催促される。
私の頭は真っ白になり、ひどく混乱してしまっていた。
自分で、自分の言葉でなんとかしなくては。
脳内から懸命に言葉を探す。
でも、そんなに都合よく都合のいい言葉は転がっていないわけで。
「……とりあえず、中に入ってください」
____結果的に、王子様の気遣いに甘えることになってしまった。
・
「____で、話したいことがあるんですか?」
ふかふかのソファに座らされたが、座り心地は最高でも居心地が最悪だ。
王子様はいつになく不機嫌で、私が間違ったことを言ってしまったら捕食されそうだ。
こちらを食べようと狙ってくる肉食動物と ただ怯える草食動物のよう。
「____き、今日私が休日になったのはどうしてですか」
……絵にかいたような臆病者。
当たり障りのない言葉しか出てこず、私が伝えたいこととは大きく逸れた内容となってしまった。
「昨日デートしてくれたからですよ。それに、昨夜は疲れたでしょう?」
「疲れた……?」
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時