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「____て、起きて、A」
……ゆっくりと、意識が浮上していく。
「____おはよ」
「ぁ、おは、ようござ……」
____今は何時だ。
ぼんやりとしていた意識が、急速に鮮明になっていく。
目の前のころん様にピントが合うまで、そう時間はかからなかった。
「ああ、別に急がなくて大丈夫だよ。なんかさ、るぅとくんがAは今日は休みでいいって」
……一体どういう風の吹き回しだ。
昨日も出かけたとはいえ休み扱いだったはず。
明日は大雨でも降るのではないか。
____とりあえず面倒な思考は後回しにして、ふらふらしながらベッドから降りた。
「あれ、もう帰っちゃうの?」
「……すみません」
____なにより、昨日のことを思い出したくなかった。
はめられた指輪を隠すように、左手を身体の後ろに持ってくる。
……これ以上、彼に優しくされたら、
彼の優しさに甘えて、堕ちてしまいそうだから。
ご丁寧にハンガーに掛けられた黄色いリボンのメイド服を取り、
「失礼しました。また後日、お礼させてください」
貼り付けたような笑顔でそう告げ、部屋を出た。
・
「ようやく帰ってこれ____?!」
自室の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは 備え付けの小さめなソファに座ってくつろいでいるジェル様だった。
「おー、おかえり」
「え、え……?」
……どうしてジェル様がここにいるのだ。
「ちょっとな、ころ……風の噂で、Aが悩んどるかもって聞いて」
「か、隠すにも隠し通せていませんが……」
張り詰めた糸が切れたように、思わず笑みがこぼれる。
ああ、彼のこういうところがときに人を救うのだな、と実感するほど、彼は天性のエンターテイナーだ。
「ほら、おいで?」
ぽんぽんと自身の隣を叩く彼。
「お邪魔します」とそこに座ると、彼はこちらをじーっと見つめている。
……さすがにずっと見られていると気まずい。
そんな私の気まずさを察知したのか、「なんか悩んどるんやろ」と切り出した。
「……業務に支障はきたしませんので」
心配させないように。
先程と同じように、笑顔を顔に貼り付けてそう応答する。
「ええから、言うてみ」
____彼には全部お見通しのようだ。
ころん様の人選にも納得がいった。
しばらく躊躇ったが、ジェル様も退いてくれる気配はなく、結局観念して 私は口を開いた。
「王子様、のことなんですけど____」
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時