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「……分からないんです。私が彼のことをどう思っているのかも、彼が私のことをどう思っているのかも」
これが正直な気持ちだった。
どう思ってる、と聞かれて 確かに私は王子様のことはただのご主人様としか思っていない。でも、私に対する王子様の行動は理解できない。
そっと指輪を撫でてみても、王子様の気持ちなんか分かるはずもなく。
……考えれば考えるほど、ぐちゃぐちゃになって夜闇に溶けていく。
「……僕は、Aのこと好きだよ」
待って。
「Aの素直なところも、可愛いところも、ちょっと天然ボケなところも、全部ひっくるめて好き」
待って。まだ待って。
「____僕を選んでよ」
待ってよ。
……どうしてだろう。
彼は、今の私が今いちばん欲しい言葉をくれる。
今だけは、甘えてもいいのかな。
なんて安直なことを考える私は、実は相当な馬鹿なのかもしれない。
「……やっぱ忘れて。でも、僕がAを好きってことは忘れないで。
____ねぇ、Aは僕のこと……」
「好き?」なんて甘い声で耳元に直接語りかけてくる彼。
ずるい、狡い。
弱っている女の子は、優しい顔をした狼さんに食べられちゃう。
そんなお話を昔読んだ。
食べられたのは、心か身体か。
そんなこと今の私には知る由もないけれど。
「ころん様、ころん様……」
手繰り寄せるように彼の手を掴み、私の手と絡ませる。
どうしても、今だけは背後の男に縋っていたい。
「私も____」
私がこんなに迷っているのも、混乱しているのも、こんな返事をしたのも、全部全部夜のせい____、
そう自分に言い聞かせながら、瞼が落ちる。
「____Aにとってはね、僕は狼かもしれない。けど、僕は狼なんかでもなんでもなく、ただの君にとってたったひとりの王子様なんだよ。君の手を取って歩く王子様……それが僕だといいんだけど。
……Aは間違ってるよ。狼なんていない。でも、君のことを、君のことだけを 考えてくれる完璧な王子様もいない」
「なんてね」という声は、もう遠く。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時