王子様に仕えるのは想像以上に大変です。2【黄】

・65 ページ18

今度こそ真剣に答えてもらわなければ、本気で王子様と縁を切ろうか考える……というのは半分くらい嘘だ。


実際は真っ先に候補から外す。それのみである。



｢きて？｣


すると、王子様は自分のすぐ目の前を指さし こちらを『早く来い』と言わんばかりに見た。



……正直少し怖い。


さっきの王子様の部屋でのことが頭の中でフラッシュバックして、足がすくんだ。



王子様もそれを察したのか、自ら私の前へ歩いてきた。


｢ひ、ぁ｣


思わず情けない声を出してしまい、咄嗟に手で口を塞ぐ。


｢そんなに怖がらないでくださいよ、ぎゅってするだけだから｣



え、と声を出す暇もなく、彼は私の腰あたりに手を回し、私を抱きしめた。


私は恐怖やらなんやら色んな感情が浮かんでは消え、狼狽(うろた)えるしかできない。


そんな私の背中を、彼は落ち着かせるようにポンポンと叩く。



｢……A、前もちらっと言ったのに なんで気付かないの｣



消え入りそうな声で、聞こえるか聞こえないか曖昧な声量で 王子様はそう呟いた。



そして、大きく息を吸い 数秒の静寂が部屋を支配する。


彼の体温を感じながら、私の鼓動も鳴りっぱなしだ。


さらに彼は息を吸い、吸い、吸い____



｢……はぁー。緊張とくために抱きしめちゃった｣



彼はゆっくりと私から離れた。


そして覚悟を決めたように息を吸い、



｢________好き。好きだから、大好きだから、僕を選んでほしいの｣

・66→←・64

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す