新野先生の娘は元軍医さん!？【玖】 (ページ4)

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いたずら心③ ページ4

(土井先生の回想)

「久しぶりじゃな雪。このような形の再会で、本当にすまない。」

『いいえ。私も父と同じ医者の身。多くの死を見てきました。むしろ、父が生きていることに感謝しております。』

山田「にしても、雪くん。すっかり大人になったな。最初、誰だか分からなかったよ。」

『そんな。まだまだ半人前ですよ。』

『ご挨拶が遅れました。新野洋一の娘、雪と申します。父の命を救っていただきありがとうございました。』

土井「一年は組担任、土井半助です。」

あのときの君は、お父上が危険な状況の中、
異常な程の冷静さで、

山田先生も、Aくんと呼んでいた。
長い間、顔を合わせていなかった分生まれてしまった距離を物語っている。

私の中での、彼女の第一印象は、良くなかった方だ。
彼女の辛い境遇を察していた。けれど…

彼女は表情の変化も乏しく、
正直、何を考えているのか分からなかった。
本音が読めない分、良い印象は受けていなかった。

『あなたは確か昨日、学園長先生の庵にいらっしゃった…土井半助さん？』

土井「はい。土井です。」

『土井さんも、お昼ご飯ですか？』

始めAは私を「土井さん」と呼んでいた。

『昨日は、父の治療にあたって頂き、誠にありがとうございました。』

土井「いえいえ！本当に良かったです、お父上がお目覚めになって…そうだ雪さん。良かったら、私と一緒にお昼ご飯どうですか？」

『いいのですか？』

土井「ええ。今日の午後は授業がありませんから。」

『そうですか。それでは、是非ご一緒させてください。』

あまり笑わない方なのかな、そう思った。
実際、出会ったばかりのときは、
なかなか彼女の笑顔を見ることができなかった。

けれど…

『では、私はおでんをいただきます。』

土井「いやいや、ここは女性優先で！私がおでんを…」

『では、じゃんけんで決めるのはどうですか？』

土井「いや…しかし…」

『土井先生、準備はよろしいですかー？じゃーんけーん…』

『「ポンッ！！！」』

『あー負けちゃいました！おばちゃん、おでんをく～ださい！』

彼女のさり気ない優しさが心に沁みた。

土井「おいしそうに食べますね。」

『あ、顔に出てました？』

土井「出てますよｗ」

たまに、ふと見せてくれる彼女本来の明るさに…笑顔に…

好奇心が湧いた。

土井「先ほどは、ありがとうございました。」

『ほえ？』

そういえば、このときすでに彼女をかわいいと思っていたなぁ…