新野先生の娘は元軍医さん!？【捌】 (ページ24)

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秘密の場所① ページ24

(利吉side)

『ありがとうね。仕事で忙しいのに…また頼ってしまって』
利吉「いえいえ!姉さんの頼みとあらば!」

今日は、姉さんの用事の付き添いだ。
しかし…

利吉「大きな木箱と紐、紙紐、そして風呂敷…木箱の中身は空ですよね?何か買いに行くんですか?」

『…』

姉さん…?

利吉「それで、私に案内役と荷物運びを頼みたいと仰っていましたが、何処へご案内しましょうか?」

『旧アサギリ領地へお願い。』
利吉「え!?」

なぜ、因縁のあるアサギリヘ…

『アサギリ領内にある、洞窟へ行きたいの。』

利吉「洞窟？」
『アサギリに拾われる前から2年間、私が寝蔵にしていた洞窟。拾われてからも、たまにそこで寝起きしてたわ。』

姉さんの怪我が治って、まだそんなに経っていないのに、
行っても大丈夫なのだろうか…

『体調の方は大丈夫よ。ただ…成長してからも、何度か行っているんだけど、何分久しぶりに行くから、道順に自信が無くてね。』

利吉「そうでしたか。」

姉さんの人生について知っている。
けれど私は、姉さんの複雑な思いや本心を、本当の意味では理解できないんだ…

私は、"お坊ちゃん"なのだろうか…

『洞窟も、案外悪いものでもないのよ。星空を眺めながら眠れるし。』

忍者をしていると、木の上や洞窟で仮眠をとるのは普通。
けどな…

『何暗い顔してるのよ。』
利吉「え?」
『私は大丈夫よ。』
利吉「あ、いえ、その…自問自答してただけです。」
『悩み?』

利吉「悩みではないのですが、私はまだまだ半人前だなと考えておりました。もっと物事を知り理解しなくてはと思いまして。」

『自問自答か…皆通る道は同じね。』
利吉「同じ…」

少し楽になった。同じなのか…

『今から行く洞窟なんだけど…利吉、これから見る物は秘密にしてほしいの。』

利吉「土井先生や洋一叔父上にも…？」
『父には、もう話してあるわ。半助さんには、いずれ話したいと思っているわ。』

利吉「分かりました。お約束します。」

秘密にしなければならない物って…一体何だろう…

利吉「ここから旧アサギリ領地です。」
『この地蔵が目印で…ここから西方向へ森に入って…』

姉さんは、記憶を探る様にして洞窟を探した。
西へ一里ほど歩いたところで…

『このあたりよ。茂みを探って…』
利吉「!!」

姉さんが、生い茂ったツル植物を探ると…

利吉「ここが…」
『うまい具合に隠れているでしょう。私が植えて、入口を隠したの。さて、中へ入りましょう。』

利吉「はい。」