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敦の叫び声が路地に響く。敦の頭には敦を叩いて怒鳴る院長の姿が。
__そうだ。僕はずっと見捨てられながら生きてきた。泣くことも許されず、人間としての居場所も殆ど無かった。
けれど、
『敦、生まれてきてくれて、ありがとね。』
泣く敦を優しく包み込む少女の声。
__それでも、僕は……!
樋口がポートマフィアから戻ってきた。探偵社から増援が来るのも時間の問題だ。
芥川はもう敦に興味がないといった様子で咳き込み、その場を去ろうとしたその時だ。芥川が背後の猛獣の呻き声を聞いたのは。
芥川が振り返るとそこには異能の光に包まれた敦が壁に張り付いていた。芥川と樋口が見つめるなか敦は虎へと変貌していく。先程切断された右足も再生する。
芥川は心底愉しそうに口角を上げる
「そうこなくては。」
敦は芥川に襲いかかる。芥川も羅生門で応戦する。黒獣が虎に伸びるが、虎は寸前で躱し羅生門を足場に芥川に飛びかかる。
「何っ!?」
そのまま芥川は虎の体当たりにより壁に吹き飛ぶ。
「おのれ!!」
樋口が叫び虎へと銃を発砲するが、銃弾は全て弾かれる。
「銃弾が通らない!?」
樋口がそう云ったとき、虎は樋口の方を振り向く。
虎が樋口めがけて駆ける。虎の牙が樋口に届く寸前で芥川が虎の巨体を前後二つに切断する。
「ち……生け捕りの筈が……」
芥川は咳き込みながらごちると、虎の体は次第に透明になり消えてしまう。いつの間にか周囲には雪が降っている。谷崎の異能『細雪』だ。
谷崎は不敵な目で芥川を毅然と見ている。
「今切り裂いたのは虚像か!では__!」
芥川の背後に実体の虎が現れる。芥川は笑みを浮かべ異能を発動させる。
「『羅生門__叢』!」
虎と黒い手がぶつかろうとしたその時
「はぁーいそこまでー。」
間の抜けた声が路地に響く。
次の瞬間芥川の『羅生門』と敦の『月下獣』が無効化され、敦は地面へと倒れる。
「なっ!」
芥川は現れた人物__太宰を驚いたように見つめる。
「貴方は探偵社の!増援ですか………」
樋口は忌々しそうに云う。
「それもあるけど、美人さんの行動は気になるたちでね。こっそり聞かせてもらった。」
太宰は何かの受信機らしきものを取り出す。
樋口はそれを見て自身のポケットを探る。
そこには盗聴マイクがあった。
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作者名:玉兎 | 作成日時:2019年7月28日 10時