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首輪 ページ3

「豊山さん、おはよう」

教室に着くと、蘇我に話しかけられた。
いつもクラスの中心に居るような明るい彼が、陰キャ(笑)の私に話しかけている。
なんだか、世紀の瞬間に立ち会ったような気分になった。

「結局、豊山さんしかメールくれなかったよ」
「そりゃ残念だな」

あーあー何素っ気ない態度とってんだボケぇ!と思いながら、私は教科書などを鞄から出した。
何気なく斜め後ろの蘇我の席を見ると、机上に折り紙で作られた赤と青の椅子が置いてあった。


朝の回では、席替えがあった。
くじ引きで、私は一番前の廊下側から2番目の席になってしまった。
まぁ目が悪いからいいか、とため息を吐いた。
一番廊下側は誰だろう、と思いそちらに目をやると、ニコニコしている蘇我がいた。

「どうも、奇遇だね」

蘇我はにやにやしながら机の上の折り紙の椅子をくるくるといじった。
私は何だか怖くなって、授業に集中しようとした。
けれども、隣の席が気になって仕方がない。
蘇我はどの授業の時間中でも折り紙を折っている。
古典の時間には兎を折っていたし、数学の時間には孔雀を折っていた。

始業のチャイムが鳴り、6時間目が始まった(うちの学校の授業は全6時間)。
先生の話が終わり、授業に移る。
保健体育だから、あまり聞かないでも良いだろう、と思いあくびをした。
がたん、と蘇我の方から机を揺らす音が聞こえた。
なんだなんだと思い、そちらに目をやって驚いた。
蘇我が机の上で正座をしていた。
先生はそんな彼が見えないかのように話を進めていく。

「しっかり見ててよ」

蘇我が指を高らかに鳴らした。
その音が空間を揺らした感覚が私にも分かった。
瞬きをした一瞬の間で、私の見える世界が変わってしまった。
クラスメイトは首輪をつけられ、そのリードは天井にくくりつけられている。
首輪の色はひとりひとり違い、とてもカラフルだ。
私の首にも首輪が巻かれていた。
鮮血のような赤色に、銀色の×の形のチャームがついている。
リードを引っ張ると、確かにその感触があった。
蘇我の首輪は深い海のような蒼に、金色のダイヤマークがついていた。
リードは鋭いもので切られたかのようにすっぱりと切り口がきれいで、
宙ぶらりんになっていた。

「自由をあげよう、赤の共謀者さん」

蘇我はそういうと、ズボンのポケットから銀色の折り紙を取り出した。
ナイフの形のようになっている。
彼はそれを、私を繋ぐリードに向かって笑顔で振り下ろした。

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作者名:日下 | 作成日時:2020年4月14日 22時

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