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仙蔵と律希が私の真下を通り過ぎた。木の枝と枝の間から、小さくなった二人の背中が並んでいる。
これはいけるかもしれない。二人は私に気づいていないし、火縄銃を使った遠距離戦法が得意な私にとっては、この上ないチャンスだ。これを逃すわけにはいかない。
私は肩に担いでいた火縄銃を下ろし、右腰に付けている袋から、射撃に必要な道具を取り出す。音を立てないように細心の注意を払って、弾と火薬をセットし、顔の横に構えた。
あ、皆さん心配しないで、これはあくまで授業なので、使うのは本物に似せた偽の弾ですよ!!ちょっと、…いやかなり痛いかもしれないけど、傷ができることは無いからね!
そんな説明はともかく、私は狙いを定めた。ゆっくり、酸素が全身に行き渡るのを感じながら、息を取り入れる。
よし。
パァン
午後の麗らかな山には到底似合わない、銃声が耳を貫く。
見事に命中していれば、声が聞こえてくるはずなのだが……、どちらかの声が聞こえてくることはなかった。
A「……外したか。」「何をだ?」
私がぼそりと呟くと、すぐ横から声が聞こえてきた。この声は……
A「小平太!!ってうわっ!」
横を向くと、鼻と鼻がぶつかるぐらいの至近距離にニッコニコの満面の笑みの七松小平太。まさに絶体絶命。私は驚いた拍子にバランスを崩して、木の枝から真っ逆さま。
ドスン
痛ぁ……。こんな盛大に落ちたのって何年ぶりだろう。上手く受身をとることが出来ず、硬い地面に思い切り体を打ち付けてしまった。
小平太「わはは!!Aの失敗は珍しいな!!では、この紐は貰っていくぞ!」
そうして小平太は、落ちた余韻で動けずにいる私をよそに、紐を奪って颯爽と走り去ってしまった。
あーあ、今頃文次郎は何をしているんだろう。それもこれも文次郎のせいだ!あの時留三郎とくだらない喧嘩を始めていなければ、勝てていたかもしれないのに。
律希「いた!!」
A「うわっ。」
私が落ちた姿勢のまま一人静かに文次郎へ恨みの念を送っていると、律希と仙蔵がやって来た。多分、私が弾をうち損ねたから、こっちにやってきたんだろう。
仙蔵「なんだ、もう紐が取られているではないか。」
そのとき、忍術学園の校舎の方から、鐘の音が聞こえてきた。授業の終わりの合図、つまりこの実習も終了。
律希「あーあ、結局一本も取れなかったよ。」
仙蔵「仕方ない。帰るぞ。」
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ベアちん(プロフ) - たうふ★さん» コメントありがとうございます。そのお話私も描きたいなーって思ってたんです!!リクエストは順番に消化してくのでちょっと時間がかかると思うんですが、楽しみにしていてください! (2021年11月2日 23時) (レス) id: e1de9352a4 (このIDを非表示/違反報告)
たうふ★(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します!夢主ちゃんが拐われて、仙蔵がボロボロになりながらも夢主を助ける(語彙力)というお話が見たいです! (2021年11月2日 20時) (レス) id: 875905f17e (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - 久々の更新だ〜!待ってました!学園長…思い付きをやめてもらいたい…! (2021年10月26日 23時) (レス) @page46 id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - 私のコメントありがたい!←調子に乗るな(^言^)これから、たくさんコメントしますね! (2021年10月12日 20時) (レス) @page45 id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
ベアちん(プロフ) - しゅるさん» コメントありがとうございます。リクエスト大歓迎です!心得ました!少々遅くなるかもしれませんが気長にお待ちくだせえ…。 (2021年10月12日 7時) (レス) id: e1de9352a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベアちん | 作成日時:2021年7月19日 14時