【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ9)

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「髪も社会に不適切だし」

「そろそろぶん殴るぞテメー」

「やってみやがれこんちくしょう」

昔から変わらない、覇気のない罵倒を聞き流しながら、思わず笑ってしまう。

「なに笑ってんだよ天パなめんなよテメー」

軽く凄む銀時は「ごめんって」とあしらって、焼き鳥をつまんだ。

「昔からアンタは失礼だし天パだよね」

「天パ関係なくね？つーか今失礼だったのお前」

「目も相変わらず死んでるし。モテないでしょ」

「男とサシ飲みだってのに開口一番日本酒頼んだ奴に言われたかねーよ！」

おっさんかお前は、とのこと。うるせえばかやろうと言うほかない。日本酒の味を覚えてしまった以上私は日本酒にゾッコンラブなのである。そもそも銀時相手にカワイコぶってどうするんだ、そんなもん生産性はゼロより下だ。

当てつけのようにコップの中身を空にして「あーうまい」と吐き出せば、「まァお前らしいっちゃらしいわ」おかしそうにそいつが笑っていた。

「天パも死んだ目も銀時らしさには溢れてると思う、私も」

「それ褒められてんの」

「超ほめことば」

「そーかい」

どうやらこいつを前にすれば、何も考えずとも会話は弾んでいくらしい。その会話を少し心地よく感じてしまう程度には私も単純であるようで、先程の気恥ずかしさもいつの間にか消えていた。なんだかまるで高校生に戻ったかのような錯覚を、覚える。二十代も後半に差し掛かっているというのに呆れたものである。

一方銀時は――もしかしたらそいつも同じことを考えていたのか――「ったくよォ」とかなんとかぼやき、もう微温くなっているだろうビールを飲み干した。そして、酒臭さと共にひとこと。

「――十年か」

たったのひとことだというのに、そこにのせられた様々なものが透けて見えるようだった。気だるげな瞳は、気だるげながら遠くを見ている風でもある。その頬を支える腕がいつの間にか逞しい大人の男のそれになっていたことに、少しだけ驚いた。

高校から十年、卒業から十年。恋人同士だったあのときから、十年。見ないふりをするように、私も酒をあおる。――しかし、もしやあおりすぎたのか。

「……付き合ってたんだっけ、私たち」

日本酒に押されて飛び出たそれは、紛れもなく血迷いというべきものだった。夫婦喧嘩は犬も食わないと言うけれど、十年も前の色恋沙汰をほじくり返すなんてその犬が逃げていくレベルのものだろう。アホだ。アホすぎる。