【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ6)

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縁日も人でいっぱいだった。
迷わないように、はぐれないように、Aの小さな手を握り締めて屋台をまわる。

「お、りんご飴。お前確か好きだったよな」
「うん、よく覚えてるね」
「買ってきてやるよ」

流石に沈黙に耐えられなくて、記憶を辿ってAが好きだと言っていたりんご飴を買った。
受け取ったAが袋を開けないまま、じっとりんご飴を見つめる。

「食わねーの？」
「うん、もったいない」
「…そう、か」

小さく笑ったAが今度は別の屋台を指差して「銀ちゃんは、あれが好きだったよね」と言った。
久しぶりに聞いた『銀ちゃん』だ。

「あー、綿あめな。腹はいっぱいになんねェけど、甘くて好きなんだよ」
「良かった、やっぱり銀ちゃんは甘いものが好きなんだね」
「…へ？」
「私、買って来るね」

今のは何の『良かった』なのか。
屋台に向かって走って行ったAが夏の蜃気楼でゆらゆらと揺れる。
綿あめを手にして戻ってきたAが「どこかで座って食べない？」と言うまで俺の意識はそこには無かった。

＊＊＊

人気のない場所を探して、神社の冷たい石段に二人で腰を落ち着けた。

「おいしい」
「そっか、良かったな」

それぞれが買ってきたものを食べて、ここで花火が上がるのを待つ。
もう居心地の悪さは無かった。

「ね、銀ちゃん」
「ん？」
「私、銀ちゃんに沢山迷惑掛けたよね…本当に、ごめんなさい」

そう言ってAが頭を下げて謝った。
俺は何のことだか分からなくて「か、頭あげろよ」と慌ててAの肩に手を置く。
けれど、Aは頭を上げなかった。

「私、自分の事ばかりで…銀ちゃんだって忙しいのに、あの時チョコ作り任せちゃったし…それ以外の時も銀ちゃんは私の話ばっかり聞いてて、嫌だったよね…ごめんね」
「違ェって…謝るのは俺の方だし、お前に酷いこと言ったろ」
「ううん、言われるまで気付けなかった私が悪いの…本当、あんなにしてくれたのにフラれちゃったから顔向けも出来なくて」

膝に雫が零れ落ちた。
Aが、泣いている。

「ごめんね、ごめんなさい…本当に、ごめんなさい」

何がAを泣かせたのか。
Aをフった奴か？

いや、泣かせたのは俺だ。

「辛いなら…もう、やめちまえ」

ずっと前、後悔したことがあった。
Aが奴を好きになるぐらいなら、その前に伝えれば良かった、と。

「お前、俺を好きになれば良いじゃん」

たった一言、そう言えば良かっただけの話。