【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ5)

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2年の冬はあっという間だった。
バレンタイン以来、俺とAが話をすることはなくて、3年になってクラスも離れてしまった。

寂しい気持ちは無かった。
Aに対する罪悪感を感じる頻度は減ったし、Aを見かけなくなったから傷付く回数だって減った。

あとは、時間が解決してくれる。
Aを好きだと思う気持ちを忘れられる日が来るのを待つだけだった。

そんなある日、俺はある噂を耳にした。
内容は、Aが惚れていた例の男に彼女が出来たらしい。元々、奴は顔が良くて有名だったから校内ではその噂で持ちきりだった。

その相手は、Aでは無かった。

俺は、どうしてもAが今どうしているのかが気になって、気になって仕方が無くて、1度ちゃんと話がしたいと思って。
あれから何度も消そうとして消せなかったLINEにメッセージを送った。

"花火大会、行かねェ？"
"駅で待ってる"

そのメッセージに返事はなく、既読が付いただけだった。

＊＊＊

花火大会当日、俺は既読が付いたなら来ることもあるかも知れない、誘ったのに俺が行かない訳にはいかない、そう思って待ち合わせ場所に来ていた。
ほんの少し、半分ぐらいは期待もしていた。

来なくても良い。
来て欲しいけど、あれだけ傷付けてあまりにも虫が良すぎると思うから、ここで待ち惚けでも良い。

Aの為にならなくても、Aの為に何かをしたかった。
例えそれが、自己満足でしか無くても。

「待ち合わせ時間…分からないよ」

そんな言葉と共にAは来た。
淡い水色の浴衣を着て、長い髪を纏めたその姿は1年前に一緒に花火大会に来た時と何一つ変わらない。

「ごめんね」
「いや、いいんだ。俺が待ち合わせ時間言わなかったから」
「ううん、それだけじゃなくて…」

Aは辛そうに俯いた。
他に何がごめんね、なのか。そんな言葉を今聞く必要はあるのか。
俺は、Aの腕を取って「今日は遊ぶぞ」と笑った。

さすが花火大会とだけあって駅も混雑している。
1年前も混雑した電車の中で今日は何しようか、なんて楽しく話していたのに今日の俺達は互いに何も言わなかった。
また、Aを傷付けてしまうことが怖かった。

それから会場に着いたけれど、花火が始まるまで時間があったから「縁日行かねェ？」と誘ってみれば、Aは「いいよ」と頷いてくれた。

まるで昔に戻ったみたいで、俺は何も考えず自然にAと手を繋いでいた。