【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ4)

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それからバレンタイン当日までAと話すことは無かった。流石のAも懲りたのだろう。

「銀ちゃん…」
「…A」

けれど、下校時刻になってAが俺に声を掛けてきた。
その手には綺麗にラッピングされた袋、きっと奴に渡すチョコだ。
まぁ、俺が作ったやつだけど。

「なに、まだ渡せてねーの。仕方ねェ奴だな、俺が側で見ててやるから…」
「ち、違う違う…もう、渡した。美味しいって言ってたよ」

ありがとう、Aが小さく笑う。
礼なんて、言う必要が無いだろう。あれだけ最悪な態度を取ったのに、それでもお前は俺から離れる気が無いのかよ。

「それでね…銀ちゃんが作ってくれてる間に、私も…作ったの」
「…は？」
「銀ちゃんには、沢山ありがとうって言いたくて…だから」
「何で、俺に……手作りなら彼奴に渡せば良いだろ」

意味が分からない。
お前が作ったものがあるなら、それを奴に渡せば良い。
きっと、そういう事だったのだ。

「そんなに彼奴にカッコ悪ィとこ見せたくねーかよ…俺が作ったやつの方が美味いからカッコ付くってか？最低だな、お前」
「ち、違うよ…そんなんじゃない。私は、銀ちゃんに食べて欲しいって思って…」
「やめてくれ！！！」

ガタンッ、と俺が鞄を机に叩き付けた音にAの肩がびくりと揺れる。

「お前、そういうの…何とも思ってねェ奴に言うなよ。無神経だって分かんねェの！？」
「あの、銀ちゃん……？」
「もう、お前の面倒見んのは懲り懲りなんだよ。気付けよ、目障りなんだよ…お前」

目にいっぱい涙を溜めたAの顔をまともに見れる筈が無かった。
消え入りそうな声で「ごめんね…」と謝ったAは俺に怯えつつも近くの机にチョコを置いて、鞄を抱き締めて走り去った。

終わった。
色んな意味で、終わった。

不器用なAが施した歪なラッピングを解いて中からチョコを取り出す。相変わらず、見た目はすごく歪だ。

何も考えずに口に含んだ。
これが最後だと思って、それを今考えるのは酷だから、今は何も考えなかった。考えたく無かった。

「あー……あっめェ…こんな、甘ェの…俺以外、食えるわけねーわーー……」

甘ったるい味だった。
こんなの、甘党でも無理な奴が居るだろって思うぐらい、甘かった。

けれど、今の俺にはしょっぱくて仕方なくて。
本当に、本当に最低なことをした。

「甘過ぎて、泣けてくるわ……ほんと、アホかよ」

こうして、俺の片想いは幕を下ろしたのだった。