【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:24,912 hit

3 ページ3

そうして、土曜日がやって来た。

「ごめんね、銀ちゃん。折角のお休みなのに付き合って貰っちゃって」
「いーよいーよ、お前が彼奴とくっ付くなら何でも」
「優しいね、銀ちゃん」

優しい訳あるか。
そう思いながらも奴より誰より俺を頼ってくれるのは素直に嬉しい。
まぁ、その頼る内容が奴の為っていうのは癪だけど。

初めて訪れたAの部屋はいかにも女子っていう感じの部屋だった。
ピンクを基調とした家具で統一されていて、ウサギのぬいぐるみ等も置いてある。

「少女趣味だよな、お前って」
「ダメかな…」
「いや、俺は好きだけど…」

って、俺が好きって言ってどうすんだよ。
焦りかけたけれど、Aは「そっかぁ」なんて朗らかに笑っていて、あぁやはりお前の眼中に俺は無いって訳ね、と思い知らされるだけだった。

モヤモヤする。
Aと居ると、心の奥底がどろりと溶け出すみたいで、居心地悪い。
こんなに、好きなのに。

「荷物、私の部屋に置いてて良いからキッチン行こ」
「…おー」

奴はもうこの部屋に上がったのかな、いや、まだ付き合ってないし上がったりしねーか。

「上がれるのは…男友達だからか」

呟いた言葉はきっとAには聞こえていない。

＊＊＊

キッチンは既に調理器具でごった返していて、Aは「はい、どうぞ」とエプロンを差し出した。

「お父さんのだから銀ちゃんでもサイズ合うと思う」
「サンキュ。で、何作んの」
「えっと……ガトーショコラ」
「ん、分かった」

さっさと作って帰りたい。
そもそも、何で恋敵宛のチョコなんざ作らなきゃいけねェんだよ。
すっげー今更だけど。

チョコレートを湯煎で溶かし、その間に粉の準備をして、諸々の材料を手際良く用意する。
手持ち無沙汰になってしまったAが慌てたように「私も手伝うよ」と言った。

「いーよ、大体は俺がやってやるからラッピングだけしとけって」
「でも…」
「料理得意なんだよ、お前が作るより美味く作れる自信あるし」
「……うん」

最低だ。
すぐには気付けなかった。俺にも余裕が無かったから。
一心不乱に作っている俺には、Aが何をしているのか分からなかった。

地獄のような時間だった。

「完成したぞ」
「…やっぱり、上手だね」
「んじゃ、帰るわ」
「あっ…銀ちゃん……」

呼び止めるAを無視して家を出た。

流石にAも分かっただろう。
俺が最低な奴だって思っただろう。
頼むから、もう二度と俺に話し掛けたりしないでくれ。