【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ16)

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高杉はなにやら改心したらしく、あの一件から授業にしっかりと出席していた。クラスの皆は、最初こそピリピリと張り詰めた空気に怯えていたが、今ではこれが日常のように、日々へ溶け込んでいる。

しかし机の上には教科書が広げてあるものの、勉強する気が微塵も感じ取れない高杉は、窓の外から見える空を見上げていた。

本当に空を見ているのか、Aの席からは判別つかないが、ただの乾いた青天井だったり、どんよりと重たい曇り空だったりと、昨日と全く同じ空模様を見せない万華鏡のような空を、彼は飽きもせずに眺めているのだ。

まるで、彼には彼女には見えない別の何かが見えているみたいで。そう思った彼女は、彼に倣って時折窓の外を見るも、やはりそこにはただの空しかない。
しかし、反射して窓に映る彼の右目とパッチリ目が合った気がして、咄嗟に彼女は黒板へと顔を背けた。

『教科書の60ページ開けろ～』

担任の間の抜けた声が教室に通り、彼女は机の中から教科書を取り出そうとした。が、その手を寸でのところで止め、机の中に差し込んだ手を抜く。そして彼の方へ顔を向け、「ねえ」と小さな声をかけた。

緊張から来ているのもある上に、ずっと塞いでいた喉をいきなり開けたものだから、少々吃って聞こえてしまう。それでも彼には彼女の声が届いたようで、彼は「あ？」と地を這う低い声と共に、眉間の皺を寄せた。

『教科書、見せて』

高杉が、うんともすんとも言わない内に、Aは先手必勝として机をピッタリくっつける。中学の時は元々席が隣とくっつけられていたため、彼女には少し懐かしく思えた。
だが彼は先ほどよりも眉間の皺を深くさせ、柳眉を逆立てている。

『良いっつってねェだろ』
『……だめなの？』

そう聞くと、高杉は両の口角を下げては、形の良い薄い唇を山形にして黙り込んだ。
無言は肯定。つまり了承してくれたという認識をしても構わないだろう。自分勝手に受け取ったAは、満足そうに足をぶらつかせる。

周りの席の人から送られる、不信感の込められた視線は彼女に針のように刺さるが、それでも半径約六十センチにも満たないこの楕円の空間は、彼と彼女だけの不可侵領域だった。

高杉の今にも舌打ちをしそうな顔は、この間から変わらず彼女に刃を向けるような相をしている。それでも周囲に対して無関心を貫く彼の表情を、Aは自分がここまではっきりと崩していることに、歪んだ優越感が湧いてしまったのだ。

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