【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ12)

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――――――

「――あ、涼しい」

会計と銀時からの集金を終えて、外。既に日付は新しいものとなってしまったこの時間帯、肌を撫でるのは涼やかな風だった。「いい酔い醒ましになるかもね」駅までの十五分に、右足をのせる。

24時を過ぎたということもあって、店の中で盛り上がる酒飲みたちの気配こそあれど辺りに人はいなかった。喧騒からは隔てられた夜道を、二人並んで進んで、進んで。

「……久しぶりだったね」

ゆったりとした沈黙の中、そうこぼしたのは私だった。楽しかった、と、一応そこは素直に伝えておく。
「珍しいじゃねーか」ふっと笑った銀時は息を吐くように口を閉じ、そして少しの時を置いてまたそれを開いた。

「――どーして別れたんだっけか、俺たちゃ」

そいつの横目がこちらを見ていることが、わかる。
十年も前のことを掘り起こすその言葉だけれど、先程のように恥ずかしさやら何やらがわいてこないのはこの涼やかな夜風のおかげだろうか。でも、それにしてはどこか綱渡りのような――一歩踏み間違えたら、なにかがどうにかなってしまいそうな、そんな雰囲気も感じていた。

けれどともかく、“どうして別れたのか”。その問いへの答は、流れるように唇から滑り出る。

「……ガキすぎたから、でしょ」

決して、決定的な何かがあったとかそういうわけじゃない。嫌いになったとか修羅場になったとか、そんなんじゃない。ただあの頃、恋は消耗品だったというだけ。「贅沢なもんだわ」今とは、違っただけ。

私の答を聞いた銀時は可笑しそうに笑った。

「ケツの青いガキが色恋に手なんざ出すもんじゃねェってこったな」

茶化すような声によって数秒前までの空気が緩んだ気がした。それに、どうしてか安心する。「そーいうこと。アンタにゃ百年早いってね」安心したついでに、私も軽い調子で音を発した。

でもそれが、仇となった。

「オイコラ百年は言い過ぎだろ、その頃にゃ機能不全だぞ流石の俺でも」

「じゃ百歩譲って八十年」

「譲る気ねーだろお前。ったく、……十年だな」

「……はあ？」

――十年、早かった。
何でもないように言ってのけた銀時を、思わず凝視する。

「そんで、十年経ったな」

のろのろと動いていた足が、とうとう止まってしまった。「なにそれ」彼の言葉を深く考えるより先、自身の思考を塞ぐように言葉を落とす。

一方銀時は、また何でもないように、けれど視線だけは確かにこちらへよこしながら語を続けるようだった。