【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ2)

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「でも、お前のことが嫌いなら誘いを受けたりもしねーだろ」
「…うん」
「だから、大丈夫だって」

今の俺に出来ることは、男友達としてAを慰めることだけ。
心の奥底でその男と代わりたいと思いながら「銀ちゃんと話してると元気が出るよ」と笑うAを眺める。

「ったりめーだろ、俺はお前の親友なんだから」

思ってもいない言葉を笑顔でつらつらと述べるのは、苦しいけれど。
それでも、Aに嫌われることよりは遥かにマシに思えたのだ。

＊＊＊

喫茶店での相談も回数を重ねて、そしてAと奴との距離も少しずつ縮まってきた。

「バレンタインにね、チョコ作ろうかなって思ってるの」
「へェ、手作りか」
「ん」

こくり、と頬を赤らめて頷く。
去年はそのチョコを貰ったのは俺だったなぁ、なんて未練がましく考えた。

「それで、あの…銀ちゃんってお料理上手だよね」
「ほォ、俺を働かせようってか」
「お願い…！！私、知っての通り上手じゃないから、少しだけ手伝って欲しくて、そのまま銀ちゃんにも作ったチョコ渡せるし……」

そんな事ない。
去年、お前がくれたチョコだって本当に美味かった。
形は歪だったかも知れないけど、ちゃんと心の込もったチョコだった。

そう、思ったのは俺だけなのか？

「ダメだ。手作りは本命にだけ渡せ」
「あ、………そう、だよね」
「手伝うのは構わねェけど」
「ほんと！？」

Aが嬉しそうに顔を上げる。
あぁ、やっぱ…好きだな。
Aの笑った顔、すげー好き。

「ほんと、ほんと。いつ作んの？」
「次の土曜日…かな」
「オッケー、またLINEするわ」
「うん、待ってる」

噛み締めるように呟いた「待ってる」は俺を期待させるのには十分すぎる言葉なのに、望みがない事を十分すぎるぐらい知っていたから、悔しくて拳を強く握った。

ほんの少し前まで、こんな気持ちになった事は一度も無かった。
ただ、Aと過ごす時間が心地良くて、楽しかった。

片想いなんて、不毛で、楽しくなんかない。
だけど、簡単に嫌いにもなれない。

「……あーあ、こんな事なら」
「どうしたの？」
「何でもねーよ、帰るわ」

この日、俺は初めて注文したいちごミルクを飲み残した。
何だか、味がしなかった。

こんな事なら、こんな事になると知っていれば伝えていた。
たった一言「好きだ」と。

店から出れば冷えた冬の風が俺の頬を撫でて、急に虚しくなった。
俺の不毛な片想いに何の意味があるのか、誰か俺に教えてくれよ。