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―132 命の重さ ページ32

「…なんで、ですか」


絞り出すような声
ずっと気難しい顔をして黙っていたと思ったら


「どういう意味かな、沢田」


こんなやりとりをいつかした気がする
まったく同じ言葉を返した気がする

Aは肩を震わせて、しかしまっすぐこちらへ視線を向けてくる沢田に、そんな既視感を覚えていた。

そうだ、あれは黒曜の
骸たちとの一件が終わって、偶然会った沢田に同じことを言われたのだった。

あの時と違うのは、Aが聞き返しても口は閉ざしたままだというところ
Aを見つめるその視線

言いづらくてそうしているわけじゃない
考えがまとまらず、声を出すことができないのだと、Aを含むその場にいる大人たちは察して、沢田の答えを待った。


「…昔からっていうか、今の俺はトガセさんと知り合ってそんなに時間も経ってないから、偉そうに言えないですけど
どうしてそんなに、自分を犠牲にするんですか」


目が見えないAには沢田の表情などわかりようもなかったが、彼の震える声だけでそのとてつもない悲しみを汲み取ることができる

超直感なのか

未来のボンゴレファミリーすら手も足も出なかった白蘭を前に、Aが選択肢など持ちえなかったことも理解した上で沢田は“なぜ”と聞いたのだ。


やっぱり君はすごい


目は口ほどに物を言う、というくらいに目は雄弁で多くを語る
しかし瞳が包帯に隠され、ほんの少し口角が上がっただけなのに沢田にはAが微笑んだことがわかった。

それが歓喜を含むもので、あまりに場違いすぎるその感情に思わず鳥肌が立ったことも彼のみぞ知る


「っ…あの?」

「さすがだね」


戸惑う沢田と、はたからはなにも変わらないように見えるAに、周りは理解が追いついていない顔で視線を彷徨わせた。


「さすがって…いったいどういう?」

「君の質問の答えには、君たちと出会う前。私の過去が大きく関わるから…」


小さな空間に緊張が満ちて、さわりと音を立てる

Aの過去、それはビアンキたちにとっては10年お預けにされた。リボーンにとっても優先して知りたい情報であることに変わりはない

思わず身を乗り出した面々に、Aはいたずらっぽく笑ったかと思えば、すとんとその口元から笑みが消え無表情のまま手でそれを遮った。


「話さないよ。まだ話せない
そうだな…もし白蘭を倒すことができたなら、私はこの時代の皆に全部話すよ。君たちが知りたいことすべてね。
ただ君たちは…」


ゆっくり、リボーンと沢田へ向き直る


「過去の私から聞くべきでしょう
きっと、決心がつくのはもう少し先だろうけど」

―133 子供のような男→←―131 目が見えない



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po_poncham(プロフ) - 一夜さん» 長らく更新していてすみません、あたたかいお言葉ありがとうございます。ふたりとも幸せにするために頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
po_poncham(プロフ) - 杏音さん» 長らく更新できずにすみません、シルヴァくんまた出てくるのでお楽しみにしていてくださいませ。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: feaf66d49a (このIDを非表示/違反報告)
一夜(プロフ) - 初めまして。ぽんかん様のこの小説がとても大好きで何度も繰り返し読ませて頂いております。トガセちゃんもシルヴァくんもとても大好きです。お忙しいとは思いますが、いつかまた更新されることを願っております。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございます! (2020年12月26日 4時) (レス) id: a1724270ec (このIDを非表示/違反報告)
杏音(プロフ) - はじめまして。どちゃくそに好きです私..!シルヴァくんすごく好きです!!続き楽しみにしてますね! (2020年3月14日 4時) (レス) id: 966729f8ef (このIDを非表示/違反報告)
たまご - いえいえ!ぽんかんさんのペースで大丈夫です!気長にお待ちしてます!あとTwitterフォローしてます!とってもファンです!!! (2020年1月31日 20時) (レス) id: cfd662b50b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽんかん | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2019年3月17日 0時

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