＊.地位と名誉 ページ12
｢いいか、お前は何としてでもこの国を守れよ。じゃなきゃ死んだアイツも報われん。｣
『アイツってなんやねん…だいたい、母さんが死んだんはお前が浮気なんかしやがって、いっつも寂しい思いさせとったからやろが！！！』
｢黙れ。お前は王子としての役目を果たしていればいいんだ。これ以上俺を困らせるな。｣
そう言い残して、あのクソ親父は俺の部屋を出ていった。
病弱だった兄の後釜として生まれた俺は、その身分を隠して兵士の群れの中にいた。
その兄も先日他界。そのショックで今日、弱かった母さんも死んだ。
クソ親父ももう永くない。
何としてでも後継者が必要になったのか、俺はいきなり｢明日お前の戴冠式を行う｣と言われて、そんてもって今に至る。
俺は王位なんて要らない。
今の仲間達と一緒に戦場を走るのが好きなんや。
｢なぁ、お前国王の息子だったってほんと？｣
噂はあっという間に広がって、仲間たちはちょっと怯えたような、悲しんでいるような顔で俺を見る。
騙してたわけじゃない。
ほんとに楽しんでたんやで。
それでもみんな、俺から距離を取った。
戴冠式を迎えずに、俺はひとりぼっちになった。
仲間ってなんやねん。
｢お前、自覚あるのか？｣
『……』
｢そんなんじゃ誰もついてこないぞ｣
『……』
｢聞いてるのか！！！｣
王子になった俺は、何かが無くなっていくのを実感した。
こう、ぽっかり穴が開く感じ。
使用人の作った笑顔も、見合いに来る貴族の女の金欲しそうな顔も、あの楽しかった時間を過ごした俺にはキツすぎる。
なーんにも面白いことがない。
｢……お前には先に話しておくか。｣
『……』
｢新しく妻を迎えることになった。お前の座も危ういと思えよ。｣
『辞めれるもんなら辞めてぇよ。』
間もなくして新しい王妃とやらはやってきた。
いつぞや見た、クソ親父の愛人。
清楚で綺麗だった母さんと違って化粧も濃いし香水臭い。
しかも俺と同い年くらいの男まで一緒に来た。
｢よろしくお願いします。兄様。｣
『きっっっしょ。』
その男は妙に俺に懐いてきた。
コイツは俺と真反対のような男で、頭もいいし礼儀も教えられてるし、何より愛想笑いがうまい。
でも運動はからっきしダメで、１回手合わせをしたら怖くなって謝ってくる始末。
でも、王の器としてはこいつの方が何倍も相応しい。
それは俺でもわかった。
｢なぁ、｣
そんなある日、突如あのクソ親父が俺に言った。
今の俺にはこれ以上ない魅力的な提案だった。
｢もう一度兵士に戻りたいなら、戻らせてやるぞ。｣
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らりるれろん(プロフ) - 更新停止ですか…ずっと待ってます。この作品がとても好きです、応援してます。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: 2108271c54 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎまる - 好きです、こじれ具合とても好きです、応援しております。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
うめる(プロフ) - 好きです(唐突な告白) (2018年10月9日 1時) (レス) id: 78e56762eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もろと | 作成日時：2018年3月12日 23時
