50.好奇心 ページ11
#Aside
あの傷も治ってきたので、私は通常の業務に戻っていた。
今日は書庫の掃除である。
書庫にはとんでもない数の本が壁一面に広がっていて、それがなんと2階まで続いている。
何度か適当に本を取ってみると、それらは全て違う言語で書かれていた。
｢あ、これ。｣
見覚えのあるそれは、日本語で書かれている本だった。
夏目漱石の吾輩は猫である
なんか可愛い名前だなぁ。
資料室とはちがって、この部屋には文学作品が沢山ある。
書庫よりも、図書館って名前の方がふさわしいんじゃないかな。
｢ふんふーん、ふふふーん｣
何の歌か思い出せないけど、何故か頭に残っている歌を歌いながら本棚の上を雑巾で拭く。
｢うわ、なにこれ。｣
そこにはホコリをかぶった1冊の本があった。
手に取ってホコリを払うと、表紙に書いてあったのは私の読めない字。
でもこれがどこの国の文字かは分かった。
｢米国で使われてた……英語だ。｣
何語かわかった所で、私に読めるわけがなくて、その本を持ったままハシゴを降りた。
まだどちらかと言うと新しい本。
全てのホコリを払うと、誰にも読まれてないみたいに綺麗な表紙だったことに気づく。
私は好奇心から、ページをめくった。
すると、1枚の挟まっていた紙切れがヒラヒラと落ちる。
｢え、え、なに。｣
それは新聞の切れ端だった。
これまた全部英語で書かれてるから私には解読不能。
こんなゴミ捨てていいよね、なんて思ってそれを拾うと、そこに載っていた1枚の写真に視線が移った。
見覚えのある顔。
｢コネシマ様？｣
凛々しい顔つきのコネシマ様が何やら豪華な衣装を着ている。
もう1枚の写真は何やらコネシマ様に少しだけ似ている男の人が演説をしているものだった。
内容が気になって仕方がない。
｢いいよね、別に。｣
私はその本と、新聞、それから書庫にあった辞書を抱えて自室に持ち込んだ。
何としてでもこの内容を解き明かしてやる。
好奇心が私にストップをかけてくれなかった。
世の中には知らない方がいいこともある。
知って欲しくないことがある。
それを隠して、懸命に生きている人がいる。
そんなこと知っていたはずなのに、私は知ろうとしてしまった、知ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 358人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らりるれろん(プロフ) - 更新停止ですか…ずっと待ってます。この作品がとても好きです、応援してます。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: 2108271c54 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎまる - 好きです、こじれ具合とても好きです、応援しております。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
うめる(プロフ) - 好きです(唐突な告白) (2018年10月9日 1時) (レス) id: 78e56762eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もろと | 作成日時：2018年3月12日 23時
