安寧 (ページ10)

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【退屈】ページ10

土井が去った後、当番である保健委員の青年がやってきた。

(…しかし、こうも寝てろとばかり言われてもなぁ。)

怪我人である私は安静にする他ないが、暇だった。保健委員であるこの生徒は仕事を一生懸命している。私が外に出ようかと上半身を起こすと、手を止めダメだと指摘してくるのだ。それに素直に従うしかない。
話す話題もなく部屋が静寂に包まれる。気まずさなどはないが、不思議な感じだ。

(こんなにゆっくり休むなんて久しぶりだな。)

フリーとはいえ、多忙な毎日だったせいもあって怪我をしても休暇は無かった。

(…任務、どうするべきか。)

忍者として依頼された任務は最後までこなければならいない。だが、そのために出て行こうとすればきっとこの青年に口煩く言われるだろう。そうなれば私としては面倒だ。どうせ、傷が治るまで解放してなどくれない。
今受けている任務が終われば一段落つけるはずだった。

(…最後の一つだったというのに。)

私は大きな溜息をついた。

？？？「あのぉ、大丈夫ですか？」
「ん？」
？？？「大きな溜息をつかれていたので。」

青年は手を止め、心配そうに私を見ていた。

「あ、あぁ、大丈夫だよ。」

私は上半身を起こす。青年は寝ろと言いたいのだろうが、その前に私が大丈夫だと言った。すると、青年は浮かない顔を向けた。青年から視線を外し作業していたであろう場所に目を向ける。取ってきた薬草やすり潰された薬草が目に入る。

「薬の調合、か。生徒なのに凄いな。えっと…」

目の前にいる青年の名が分からず口籠もる。青年はそれに気付き、口を開いた。

？？？「あ、えっと、自己紹介が遅れました。僕は六年は組、善法寺伊作です。保健委員会の委員長を務めています。」
「あ、あぁ。私は任城煉だ。…本当に凄いな、薬の調合が出来るなんて。」
伊作「あはは、なんせ6年も保健委員をやっていますから。」

頬を掻き照れている彼は、爽やかだった。

伊作「えっと、煉さんはプロ忍なんですよね？」
「ん、あぁ。」
伊作「どこのお城に務めていらっしゃるんですか？」
「私は城勤めではないんだ。依頼されたことを仕事にする。…つまり、フリーってことさ。」
伊作「フリーの忍者！？…凄い！」

彼の目がキラキラと輝いている。これ以上の深入りは面倒だと思った私は話題を変えることにした。