安寧 (ページ11)

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「と、ところで君は薬草に詳しいのか？」
伊作「え、えぇ。新野先生程ではありませんが…あ、新野先生というのは」
「知っているよ。私を治療してくれた先生だろ？」
伊作「は、はい。」
「よく勉強しているんだな。」

伊作は再び照れ、何かを思い出したようにはっとした。すると、傷を見せて欲しいと私に頼む。

伊作「そろそろ、取り替えないと。」

私は上半身の寝巻きを剥ぐと伊作は恥ずかしそうに視線を逸らした。

「…？どうした？」
伊作「い、いえ、な、なんでもありません！」

失礼します、と一言言うと左腕に巻かれていた包帯を解いた。なんともぎこちない。

(私が女だからかな。)

彼の見た目から多分十五六歳くらいだろう。思春期真っ只中の彼にとって、私の治療はやりづらいのだろう。それでも黙々とこなしている。治療が終わりホッとした伊作の顔はほんのり赤かった。

「ふふ、ありがとう。」
伊作「い、いえ！ひ、引き続き安静にしてて下さい。」

伊作はそそくさと片付ける。そのうちに、新野先生がやってきた。

新野「おや、伊作君。ご苦労様。」
伊作「新野先生！薬草摘み、ご苦労様です。」
新野「ん？おや、目を覚まされたんですね。」
「あ、はい。全ての事情は土井からお聞き致しました。新野先生、本当に有難う御座います。」

私は頭を下げる。新野先生はにこにこと笑顔でいた。

新野「いえいえ、私は治療したまでですから。御礼なら保健委員会の皆と発見した一年は組の生徒に言ってください。彼らが見つけてくれなかったら、治療が遅れていたら、貴女の命は危なかったんですから。」

なんと返せば良いか分からなくなった私は口篭ってしまった。雨の音と共に鐘の音が響く。

伊作「はっ！予鈴だ！…新野先生、煉さん！失礼します！」

そう言い、頭を下げるやいなや部屋から飛び出てった。新野先生は文机に向かい何やら書き始める。

(また、暇になってしまった。)

暇を紛らわすように窓の外の景色に目を向けた。