第157話「目覚め」 ページ9
「どうしよう……この子、針が通りません…！！」
そう緊迫した声をあげるのは、雄英からの通報により駆け付けた、救急車に乗車していた内の1人の救急隊員だった。
────…あれからというもの、リカバリーガールによる保健室での治療だけでは手に余ると判断された相澤や13号と共に、救急搬送しようとAに酸素マスクを装着させたはいいものの、その後に続く処置が全く行えない非常事態に、対応していた隊員が皆焦りを隠せないでいた。
なんせ素人でも一目見てわかる程の重症だ。生きていることが不思議な程に、呼吸は浅く心拍数も重ねる毎に低下している。
そんな中、狼狽えながらもなんとか生命を繋ぎ止めようと勤しむ隊員たちの騒動に気づいた蛙吹が、見兼ねては遠慮がちに声を掛けた。
「その子……
それでも助かるのだろうかと、不安げに顔を上げては1人の救急隊員と目を合わせる蛙吹。
しかし当の隊員は、蛙吹の口から発せられた事実に苦く息を飲み込み、動揺を隠しきれず瞳を酷く揺らしていた。
「そんな………輸血だってしなきゃいけないのにっ……！」
肌が刃物を通さない。
それは即ち、手術時に必須であるメスすら通せないという意味だ。
救急車に乗車させるまでもなく、USJから一旦屋外へと移動させて来たこの道中ですら、既に
…だとしても、こんなところで1人の金の卵を死なせてしまう訳にはいかない。
隊員達は絶望しながらも、そのプロとしての使命だけがなんとか体を動かしていた。
目は希望や奇跡といった、漠然としたものに必死に縋っている。
するとそんな思いが届いたのか、Aの目が見開かれた。
だが然し、それは感動や安堵を呼ぶには、些か突然で異質である。
眠りから覚めるような、ゆったりとした覚醒の仕方じゃない。
唐突に、見開いたのだ。
あまつさえそのうちの隻眼は初見殺しにも程がある醜怪な異彩を放っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 602人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さば(プロフ) - 普段クロスオーバーの作品はあまり見ないんですけど、読んでみたらとても面白くて一気見しちゃいました！自分は文章書くの得意じゃないので、尊敬します✨️更新頑張ってください💪応援してます！ (12月12日 23時) (
レス) id: 20de839133 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ(プロフ) - 東京喰種の作品の数が少ないので読み漁っていたらこんなに良い作品に出会えました！面白すぎて一気見しちゃいました！作者様のモチベと作者様を応援してます！ (2023年5月1日 18時) (レス) id: ea58a26248 (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 男主作品あまり見ないんですけどめちゃくちゃ好きでした😌🫶 作者様のモチベ上がりますように！！ (2022年11月16日 13時) (レス) id: d0fde4e56d (このIDを非表示/違反報告)
Acer(プロフ) - ササクさん» 気に入って頂けたようでとても嬉しいです！！最初からここまで読んでくださってありがとうございました！いえいえそんな、恐縮です😳これからも精進します💪 (2022年10月11日 22時) (レス) id: a9c8d45116 (このIDを非表示/違反報告)
ササク(プロフ) - 今日この作品に出会ったんですが面白いし好み過ぎたのでイッキ見しちゃいました😂めっちゃ面白かったです😆更新がんばってください！あと、全然関係ないですが文章能力凄まじいですね！語彙力あんまないので尊敬です😍 (2022年10月8日 23時) (レス) @page21 id: ba5c48af12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Acer | 作成日時：2022年3月19日 17時
