第63話「思い出す」緑谷side ページ13
…まるでそれらを悟ったかのように。
僕の私欲を考慮したのだと決め込んでしまう程に、それは僕にとって都合が良かった。
僕とかち合った視線を彼は逸らさないばかりか、口角を控えめに上げ、目は優しさを含みながら見栄え良く細められる。
「ﾋｪｪｯ…！」
その瞬間、事の発端でもある如何わしい通称を口にしたクラスメイトが、息詰まったような声にならない叫びをあげた。無理もない。
君のことはまだ全然知らないけれど、その気持ちは凄くわかるよと、クラスメイトの反応に心の中で激しく首を何度も縦に振る。
けれどその笑顔を向けられているのは、他の誰でもない、僕一人だけ。
それを事実と誇張し、やけに強調する自分の存在にも同時に気付いてしまった。
その瞬間彼のまともに目も当てられぬような笑顔も相まってか、この場から何処か遠くに逃げ出してしまいたい程、途轍もない羞恥心に見舞われる。
しかしどうしてだろう。
そんな彼の微笑みに、これ程までにない既視感を覚えたのだ。
それは思い出せば吉と、特定のつかないどこか体の奥底から急かされているような気分で。
けれども人一人の動作で、これ程までに満たされる事は今までに無かったと思うし。あったとしても、それを忘れる僕自身の神経を疑う。
そんな複雑とした心境に困惑して、それでも尚彼の神々しい微笑みを少しでも長くこの目に焼き付けていようと凝視していると、途端パズルのピースが嵌ったように、綺麗な思い出が蘇った。
ああああああ思い出したっ！！ あの時の！！
「儚い人っ…！？」
いてもたってもいられないあまりの衝撃に、心中では収まり切らず、不本意にも絞り出したかのような、しかしそれなりに盛った声量で叫んでしまう。
「え？」
まだ教室に残っていたクラスメイト全員分の視線が突き刺さったことが、当の彼を凝視したままでも十分にわかった。
それはもう、嫌になるくらい悟った。
不躾にも彼を指してしまった指先から、徐々に身体が小刻みに振動する。
堪らず其処彼処一面に「すっ…すみませんっ……！ しゅみませんっ…！」と、弱腰に掠れた声で何度も必死に頭を下げた。呂律が回ってなかろうが気にするな。
「…おい、お前らいつまで教室に留まっているつもりだ。時間は既に押している。さっさと移動しろ。」
羞恥、驚愕、戸惑い。……そして喜び。
滞りない状況と感情の起伏に振り回され、どうにかなりそうなところを、様子を見に戻って来たらしい相澤先生のその忠告によって、一旦丸々全てが先送りとされた。
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Acer(プロフ) - mikki-さん» 反応が遅れてしまい誠に申し訳ありません…！ 確認しました。改めてこちらの方でもお礼を述べさせていただきます。素敵なイラストをありがとうございました！！ とても嬉しかったです…！！ (2019年2月27日 21時) (
レス) id: 5b56e0d54c (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - どうも！元Clarisです！また喰種くんを描かせて頂きました！！ちょっとしたものですけどhttps://img.u.nosv.org/item/misamisahiroto/1550939565 (2019年2月24日 1時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
神宮 - ちょっと、バイト行ってくるわ。(真顔) (2019年1月11日 0時) (レス) id: a62e8a91e8 (このIDを非表示/違反報告)
Acer(プロフ) - 神宮さん» 宇宙(小並感) (2019年1月9日 13時) (レス) id: 5b56e0d54c (このIDを非表示/違反報告)
神宮 - 新婚旅行は何処がいい？(イケボ) (2019年1月8日 18時) (レス) id: a62e8a91e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Acer | 作成日時：2018年8月10日 17時
