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デリート Side

私の名はデリート。今はとっても幸せだ。しかし、隣に座っておる坊が口煩くてたまらん。

 太宰 「バナナチョコ......なんだっけ?を、あげたでしょ?協力してくれるかい、デリート」

私の名を気軽に呼ぶこやつは寄る年波の影響で名前を忘れたので坊だ。

 デリート「バナナチョコクレープだ。米粉の生地なのがまた良い味を引き出しておる。......で、坊はか弱い年寄りを殺す気か?」

手についたチョコクリームを舐めながら云うと坊はまんざらでもない顔をした。
解せぬな。

 太宰 「今回の件は私が知っている異能力者の中でもデリートが一番良いと思ったんだ。じゃなきゃ私がクレープを奢ることはないよ。それだけ本気だと知ってほしいね」

......娘の話を持ち出したかと思うたら急な場所替え。私も馬鹿ではない。

 デリート「......租界に関係しているかもしれぬ不毛な輩が坊の妹。あの娘に何かした、か?」

 太宰 「ご名答。拐かされた」

成程。坊が気張るのも妥当であるか。

 デリート「しかしそんな簡単に答えてしまっても構わないのか?娘は坊が直接手を下したとの話が出ておるが」

 太宰 「やだなあ。大切な妹に手を下せるわけないじゃないですか。___メッセージですよ。黒服への。組織を抜けた者がどうなるか、Aがいなくなっても進退に影響は一切ないというメッセージ。彼らには現実をきちんと見てもらわないと判らないようでしたし」

恐るべしである。坊は娘なんかよりもよっぽど冷酷だ。性格がまるっきり異なる。

 デリート「......よかろう。勘違いするなよ?坊ではなく娘に協力してやるだけだ。何時いなくなった?」

 太宰 「今朝。未だ一日もたっていないからこそ君にしたんだ」

 デリート「坊なりの気遣いということか。物は」

 太宰 「これで」

坊は大切そうに万年筆を懐から出した。

 デリート「うむ、いいだろう」

私の異能力は「デリート」。パソコンを使うものには判るだろう、あのデリートだ。異能詳細は巻き戻したい時間まで時間を巻き戻すことが出来る。ただし、その場にあったものが私の手元にあること、巻き戻したい時間からの現実改変は可能だが、巻き戻し始めた時間。つまり「今」までは現実改変に行ったものは異能力の使用が出来なくなる。

 太宰 「あと何年?」

 デリート「5年だ。娘とともに戻ってこい」

 太宰 「すまないね」

 デリート「行ってきてよ、太宰」


灰色の字の中に坊が消えた__。

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作成日時:2021年4月1日 19時

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