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体育祭が終わって暫く経った。体育祭で爆豪勝己は選手宣誓での発言通り優勝し、それからは職場体験や期末テストとヒーロー科らしく過密な学生生活を送っていた。爆豪本人はそれを負担とは微塵も思うことはなかったが、ある時ふと察視Aの存在を思い出した。
あれだけ唐突に絡んでおきながら体育祭後全く音沙汰の無い彼女のことを忘れたわけではなかった。ただ、所詮は『視られていた』だけの関係だ。連絡先すら交換しておらず、相互利益の為に一時的な関わりを持っていたに過ぎない。それでも垣間見えている彼女の性格を考えれば、ひと言くらいは寄越してきてもおかしくはないのではないか、という違和感があった。もしやあの結果に何か不都合があったのだろうか、と一瞬だけ考えて頭を振った。
そもそも察視の課題など爆豪には一切関係が無いことだ。考えるだけ時間の無駄だという判断を自分に下して、家に帰るべく校内の出口へ向かった。
「察視先輩のインターン先聞いた？」
「ね、高校生であそこ行くの次元が違うって感じ」
学校の玄関は共用スペースである。ゆえに、他科のそんな会話が聞こえてきても不自然ではない。爆豪は自分でも驚くくらい素早い動作で会話をしていた生徒達に割って入った。
「今察視っつったか」
「爆豪勝己……！？」
「あいつのインターンが何だって？」
委縮する経営科であろう生徒に対して、爆豪は至って冷静に、最低限の質問を続けた。聞かれた生徒も驚いてはいたが、さすがは雄英生徒というべきか要点だけを爆豪に伝えた。
爆豪の疑問は解決した。彼女は異例のインターンで体育祭後から登校していないらしかった。課題のみデータで提出し、最低限の単位を獲得しつつインターン先へ出ずっぱりのようだ。インターン先は爆豪でも聞いたことのある大企業の中枢部分であり、それを考えれば登校できないのも納得はできた。雄英高校の校風は自由が基本であり、3年生ともなれば本人の希望や状況である程度は融通が効くのだろう。加えて察視は飛び抜けて優秀らしかった。そんな生徒が自身のステップアップの為に動いて、受け入れ側も了承したのならそれはもう一種のカリキュラムである。
最後に何を話したか。爆豪は体育祭の決勝前の会話を思い返していた。あの電話の相手と関係があるのだろうか、と思案したが彼女のことは何も知らない。不意に胸に小さな虚空を感じて、知らない振りをした。
それから学校生活で察視Aの姿を見ることは無かった。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
