操りの兵器【３】 (ページ44)

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【STORY 3-19　瑞と樹】ページ44

二人は出会った。包帯を巻いた少年と黒い感情を目に宿した少年。
境遇が似ているからか、二人はすっかり打ち解けあった。
彼らは、家にいる時より家族と共にしている時よりも、お互いにいる時の方が自分が自分らしくいられた。
暇が出来れば、森で走り回り川で魚を捕まえたりとしていた。
だが今日ばかしは、違う意味で彼らはここにいるのだ。

「どういう魂胆だ――、井吹」
「――そのままの意味さ」

互いが互いの意思を曲げずに、貫こうとする信念。
二人の間に静かな風が吹く。そして、その時は来た。

「･･･」

まだ寝静まっている早朝。私は、ふらりと立ち寄った場所があった。
薄紅色と薄紫の筒状の花を咲かせた植物が、一面に咲いている開けた場所。
ふんわりとした香りが、一瞬で悟る。催眠効果がある香りだと。
人はもちろん、森も寝静まっている。静かな森の中に、一つの呼吸が聞こえる事に生きている事を実感する。

「･･･！」

催眠で見ている幻覚では無い二つの気配を感じた私は、不確定な生物に話しかけた。

「止めておけ。その気になれば、私は君達を葬り去ることができるぞ」

静かに木霊する私の声。木々の葉が私の言の葉を吸収していくかのようだ。

「――歩み寄ったのは、互いに『利益』がある。そして、『変わる』ことの出来る好機である」

まあ、彼らの事だから直接会って説得しにでも行くだろうけれども。
と、心中で呟いて私はその場を後にした。
あの気配は今、私の目にしている彼らだという事は分かった。
瑞と樹――、はてさて、どちらに軍配が上がるか見ものだな。
『魔術』からしてみれば、両者は補助し合う関係だが、此処までになると相性の問題では無く、もはや個々の力量で勝負がつくだろう。
共に過ごしてきたからこそ、お互いの癖や戦法を知っている。実に良き対戦相手ではないか。
どうせ、光と闇は見に来ているだろうな。ならば、ここはハルの連中に任せて撤退した方が賢明と言うものだ。
高い木の上から、もう一度両者を見据える。そして、、私は彼らに背を向けた。