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第3話 ページ5

アタナシアとクロードが話している時,
リリアンとフィリックスは静かにそれぞれの主を待っていたのだが…
「リリアン様,実は相談したいことが…」
「何ですか?」
「使節団をもてなす宴では,当然,ダンスもあるでしょう?」
「えぇ…あ、もしや」
「…はい…」

以前,アタナシアのデビュタントのエスコート役に
フィリックスが指名されたことがあったのだが,
クロードはそれをあまり良く思わず,フィリックスに当たっていたようだった。
リリアンは,アタナシアから少しだけ聞いていたので
フィリックスが心配していることは想像ができた。

「それでは…私が,姫様に伝えておきましょうか?」
「え、いえ。それでは姫様をエスコートしたくないと言っているようなもの…」
「違いますよ,‘陛下にエスコートをお願いしては’と進言するだけです」

“ふふっ”と静かに微笑むリリアンに,苦笑いを浮かべるフィリックス。
しかし,お互いそれに異論はなく話を進めていた。

「では,まず私がエスコートの件について…」
「そのあとは,それらしく聞いてみましょう」
「陛下がウズウズしていたというのもお忘れなく!」
「うずうず…ですか?分かりました」

まるでイタズラを楽しむ子供のような笑みを浮かべ
計画を練っている二人の耳に,

「それじゃあ、またねパパ!」

という声が聞こえてきた。

ハッとし,冷静を装う二人をアタナシアは不思議に思ったが
今は宴のことで頭は一杯だった。

“戻ろっか”
アタナシアの後ろに付き,二人は歩いていた。
リリアンは,ここで言ったほうがいいのでは…という考えが浮かび,
フィリックスに合図を出すと,彼は頷き行動に出た。

「姫様,姫様はもてなしの場ではどなたにエスコートしてもらうのですか?」
「あ、その話ね!実はねー」
「姫様!」
「な、何?リリィ」
「話を遮ってしまい申し訳ありません、ですが,どうしても言いたいことが…」
「う…うん」
「エスコートは…デビュタントと同様陛下にお願いしてはいかがかと…!」
「パパに?」

リリアンがそう告げるとアタナシアは首をかしげ,
フィリックスはリリアンに‘よくやった’と言わんばかりの輝いた目でこちらを見てきた。

「えっとね…」

二人がアタナシアをじっと見つめていると,
アタナシアは少し重い空気の中口を開いた。

「実は,もう決めたんだ」
「ど…どなたに…」
「パパに」



一瞬の沈黙の後,
リリアンとフィリックスは驚き…そして,ほっと胸をなでおろした。

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作者名:宇宙 | 作成日時:2021年1月13日 2時

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