side J ページ6
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“難攻不落の恋”……………
そう。
目の前の子犬くんは、ちょっと昔の俺。
タカノリが、あまりにも真っ直ぐに恋心を吐露するもんだから、あえて言わずにおくけどね。
「Aさんのこと、どんどん知りたくなって…頭の中、Aさんで一杯で…何なんですかね、これ。」
「恋……じゃね？」
「潤さん！ なんで、ニヤニヤしてるんですか！」
「ハハハ…！」
拗ねたタカノリは、俺から見ても可愛い。
「タカノリさぁ…」
「何ですか。」
「いつから、そんなに…好きなの？」
「多分…彼女の笑顔を見た瞬間から…ですかね。」
さっきまで拗ねていた子犬は…
彼女の笑顔を想い、とても幸せそうに………微笑(わら)っていた。
タカノリが休みの夜…
閉店間際に…Aさんは、フラリと現れた。
「いらっしゃいませ。」
「ごめんね。閉店だよね。」
「大丈夫ですよ。」
俺は、カウンターを出て表へと向かい…『OPEN』のボードを裏返した。
「何か…あったんでしょ？」
「潤くんには、お見通しか。」
無理して、笑う………貴女の、悪い癖。
「プレゼン…負けちゃった。」
「……そっか。」
「手応え、あった…のにな。」
両瞳に涙を滲ませながら、俺の差し出したグラスを煽る。
「気分転換にさぁ…新しいこと、始めてみたら？」
「えっ？」
「例えば…年下の男と、デートとか？」
「潤、くん…」
「俺と、デートしませんか？」
あの時の、貴女の顔を見て……
答は出た。
そう、思った……………
タカノリが接客に奔走しているのを確かめて、彼女の前に立つ。
「いらっしゃいませ。」
「久しぶりね。」
「厨房専任になったからね。」
「そっか。だから、顔見なかったんだね。」
ちょっと寂しそうな表情を浮かべてくれた貴女に、嬉しさが広がる。
「これ。」
「えっ…」
「タカノリから。」
彼女の前に、『トマトとモッツァレラの冷製カッペリーニ』が盛り付けられたガラスの皿を、置いた。
「どうして…」
「今日、あなたの誕生日でしょ？」
「えっ………あ！」
「あなたと初めて出会った日の、メニュー。タカノリからのプレゼントだよ。」
「気づいてるんでしょ？」
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2016年7月27日 16時
