14 ページ14
.
「っ…大丈、夫かよ」
「ごめん、ありがとう」
ほっと息をついてうらたを見る。髪はボサボサ、相当焦って来たのだろう。ごめんと一言溢すと頭を掴まれガシガシと乱暴に撫でられた。いや、これは撫でられているとは言えない。手櫛で髪を整えようとすると、その手首を掴まれ、ぐっと強い力で引き寄せられた。
「ちょっ…うら、た」
「じっとしてろ」
どうせうらたはなにを言っても聞かない。それはわかっているから諦めて身を預けることにした。今好いてる殿方もいなければうらたのことが嫌いなわけでもない。
うらたは私のことが好きだから心配してくれたんだろう。そう思うと無性にその男の顔が見たくなった。好きな人を抱き締めているとき、こいつはどんな顔をしているんだろう、なんて。
「…なんだよ」
身長差の問題で顔は横近くにある顔を見ると、目があって呆れた顔をされた。あぁくそう。お前の抜けた顔を拝んでやろうと思ったのに。心の中で舌打ちをしていると、私を抱き締める力が不意に強くなった。思わず声が洩れて恥ずかしくなったけれど、足を取られたらたまったもんじゃないと冷静を装う。
「…はぁ」
ため息をついたうらたの肩に顎をのせる形になっているから、ちょこんとはねている髪が目に入る。男にしては白い首筋だとか、それにしては筋肉で厚い胸板だとか。こいつは反比例の塊かもしれない。視線をどこにやるか迷った挙げ句うらたの肩を見ると、少し震えていた。
私のこと、本当に好きなんだ。
まだ怖いんだ。怖い目に遭ったのは私の方なのに。
いつもよりも子供っぽいうらたにくすりと笑みが溢れた。そっと背中に手を回すとより力が強くなる。背中を優しく叩くとうらたの力はどんどん緩くなっていった。
830人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2022年8月9日 11時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
こっぴー。(プロフ) - こんにちは!snrさんのヴァンパイアの方から飛んで来た者です!前作から一気読みさせていただきました…!めっちゃ好みです!更新頑張ってください! (2021年8月11日 11時) (レス) id: f811ca7a7d (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - 数話更新嬉しいです…!!!!このあとなんかおこるかな、どうかな、のワクワクでいっぱいです。これからも無理せず執筆してくださると嬉しいです楽しみにしてます〜 (2021年3月20日 13時) (レス) id: e761ef9cbb (このIDを非表示/違反報告)
ゆきか(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2020年10月12日 2時) (レス) id: 3dc25a2152 (このIDを非表示/違反報告)
shiyu(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年7月4日 22時) (レス) id: ca77629a28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ