episode.82 ページ11
.
「センラさん、お待たせしました」
「遅かったんやねぇ……って、その子は?」
視線の先には親友。慌てて紹介をするが、やっぱり最初は怖いもの。御札貼られてる僵尺が目の前にいるなんてたまったもんじゃないだろう。コミュニケーション能力の高いこの子なら大丈夫だろうとは思っていたが、やっぱり怖いものは怖いらしい。
けれどセンラさんはそれを察しながらも動じることなく手を差し出して握手を求めていた。それにびくびくしながらも手を伸ばし握手を交わした二人を見てほっと息を吐く。
「怪物ばっかりだけど、ここよりもいい暮らしができるから安心して、私が守るから」
「う、うん…」
「じゃあうらたんに一言連絡して帰ろか」
そう言って魔法陣に一枚の手紙を送ると、すぐに返ってきた。"早く帰れ"なんて血塗りの文字に慣れてしまっては最後、もうこの世に用事もなさそうだ。
「じゃあいくで」
三人で右手を繋いだときに、するりとセンラさんが私の手をなぞった。明らかにそこは濡れていて、ねっとりとした糸を引いていた。なんだと確認しようとしたとき、もう片方の手を小突かれる。
「どうしたの?」
「……ほんとに、大丈夫なんだよ、ね?」
「大丈夫、絶対に守るから」
そう言っても不安の色がなかなか消えない親友の顔色を伺いながら、手についた謎の液体の正体もわからないまま、私たちは船へと戻った。
837人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
巫鳥(プロフ) - この作品大好きです!これからも楽しみにしてます! (2019年12月29日 15時) (レス) id: 92f83285a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ