赤い賢者に言葉を教えよう！ 【あ/ほ/の/坂/田】

『結婚』って言葉４ ページ18

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　｢これで大丈夫……暫く見ていられるかな？｣

　｢は、はい…すみませんでした｣


私が頼りないせいで迷惑を掛けてしまった、と使えない自分を責める。そんな私を否定することなく、笑って｢大丈夫｣だと言ってくださった先輩に思わず泣きそうになった。嗚呼、なんて涙脆いのだろうか。みっともない。



　｢じゃあ、気を付けてね｣

　｢ありがとうございました…!!｣



扉が閉じ、廊下から足音が聞こえなくなるまでお辞儀を続けた。ほんと、何やってるんだろうか。何の為に、ここまで勉強してきたのだろうか。自分を責めてもどうにもならないことなんて分かっているけれど、どうしても責めてしまう。みすぼらしい。



　｢…坂田さん、ごめんなさい｣


ベッドで横になり、少し鼾を掻いている坂田さんはまだ起きる様子がない。ベッドの近くに置いてある辞書を見た瞬間、とっても恥ずかしくなった。


どうすれば私はもっと優秀になれるのか…


ずっとそんな事を考え込んでいると、空疎な唸りが聞こえた。その方へ首を動かすと、起きそうなのか起きているのか、ごろごろ身体を転がしていた。



　｢…坂田さん？｣

　｢ぅ…んぅ……はよ｣



寝転んだまま、ふわりとした笑顔で、いつもは大きく開いて輝いている瞳を細めるものだから不覚にも可愛いと思ってしまった。それと同時に、坂田さんを救えなかった自分に葛藤が募ってゆく。


(私がちゃんとしていれば…)


坂田さんに合わせる顔がなくて、俯いて顔を隠す。こんなときに誰かが慰めてくれたら、なんて穢いことを平気で考えてしまう私が嫌だ。ほんとに、穢れている。



流石『穢れた魔女』だ。

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