【転スラ】スライム拾った

拾った16 ページ16

オレがAさんに拾われて１ヶ月たったあの日から

オレは眠ると、ある夢を見るようになった
それは、オレがいなくなった後のテンペストの夢

オレの体は透けていて、声をかけても誰もオレに気づかなかったから夢だとわかったんだが

最初の頃は目が覚めても何か夢を見ている気がしただけで何も思い出せなかった

だが日を追う事に、目が覚めても夢の内容が鮮明に思い出せるようになっていった。
だから気づいた



あぁ、オレは近々元の世界に帰るんだなって



あえてAさんにはその事を伝えなかった

ただでさえ映画が当日見れないってだけであんなに落ち込んでいたのに、
オレも帰ってしまうなんて伝えてしまったら彼女がどうなるのか分からなかったから

彼女にはなるべく心配をかけまいと、ストレスをかけまいと黙って生活していたある日の夜

いつもとは違う夢を見た


そこに居たのは超絶美人、男のように見えるが女のようにも見える。
老人のように見えれば幼子のようにも見えた

現実にいたら誰もが絶対目を奪われてしまうその美貌に、1種の恐怖すら感じた

《どうだったか？自分たちの“人生“が“物語“として存在する世界があるのだと知った気持ちは

どうだったか？その“物語“を本人を前に嬉々として語り、見せ、楽しむ人間に世話される気分は

恨めしかったか？憎たらしかったか？
憤りを感じたか？それとも悲壮感に苛まれたか？

その運命に抗おうと思わなかったか？
なぁ、“物語“に支配されていることに気づきもせず

救世主になったつもりでいるスライムよ》

その人物はやはり老若男女の分からない声で語りかけてきた

誰で何者なのかは知らないが、とりあえず

「…お前がオレをこの世界に連れてきた張本人か」

《それが？今私はお前に問うている、早くそれに答えよ。》

「は？なんだよ全く…。えーっと、なんだったか、自分の人生…スライム生か？が、他者に作られているってことについての感想だっけ？




ぶっちゃけどうでもいいね」


《…なんだと？》

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